はじめに
気づいたら定期試験が始まっていました.
それは別にどうでもいいんですが,今回は Mills の定理という面白い定理を見つけたので,ステートメントと証明を紹介したいと思います.かんたんです.
証明
(以下は完全に Mills' Theorem - ProofWiki に依拠しています)
Mills の定理は初等的に証明できます.中学数学程度の知識があれば十分でしょう.
以下, を 番目の素数, を正整数の全体, を素数の全体とします.
さて,隣接する素数の差について,以下のような事実が知られています*1.
補題 1
ある が存在して,任意の に対し とできる*2.
これを用いて以下の補題を証明していきます.
補題 2
すべての に対し, を満たすような が存在する.
証明
を より小さい最大の素数とします.
したがって,
です.(証明終)
いま, なる素数 をとります.補題 2 より,無限数列 であって, を満たすようなものが存在します.
さらに,写像 を以下のように定義します.
より となることは大丈夫ですね.
こうして定義した について,以下の補題が成り立ちます.
補題 3
任意の に対して,.
証明
(証明終)
補題 4
任意の に対して,.
証明
(証明終)
補題 3 から が狭義単調増加であることが従います.また, かつ は狭義単調減少なので, は上に有界であり,極限値を持ちます(Weierstrass の定理).
いま, とすると, であり,
,
すなわち,
であるため, は任意の について素数となります.
Mills 定数,Mills 素数
さて,上の証明で存在性を確認できた ですが,具体的な値はどのようになっているかというと,実は不明です.しかしながら,Riemann 予想が真であると仮定すると,
であることがわかっています*3.これを Mills 定数といいます.
この に対して,実際に を計算すると,
……
となります.これらが全て素数であることは容易に確認できます.こうして出てくる素数を Mills 素数と呼ぶそうです.以降の値については A051254 - OEIS を参照してください.当たり前ですが,べき乗のべき乗なので の増加に従って は爆発的に増大します.
*1: Prime gap - Wikipedia などを参照してください.実際は より精度の良い近似が判明していますが,今回はこれで十分です.
*2: の値は今のところ判明していないそうです.
*3:A051021 - OEIS を参照してください.