2021年を振り返って

個人的に激動の一年だった.

学業

5 年間通った高専を無事卒業し,晴れて大学に編入した.しかし世に言う「人生の夏休み」からは程遠い大学生活で,オンライン授業による人間関係の希薄化・初めての一人暮らしに起因する苦労・過酷すぎる授業や課題,の三重苦で結構つらい感じになっていた.

前期は駒場で主に総合科目と第二外国語の単位を集めることになるが,ロシア語に毎日苦しめられて泣くかと思った.格変化はもう全部忘れた.

時間割の組み方にも問題があり,毎日 5 限が入っていたために帰宅が 19 時半になったりしていた.人生に二周目があればもっと計画的に時間割を組みたい.

個人的に,総合科目の「計算の理論」は面白い授業だった.「常微分方程式」は,数学科教員による授業を初めて受ける身としては学ぶところが多かった.

後期は進学内定者と事実上同じ扱いになり,本格的に専門科目の授業がある.とはいえ物理工学科と同一の時間割なので物理系科目のウエイトが結構大きく,前期に比べて楽になったかというとそうでもない.

A1 タームの「基礎数理」は授業のペースが異常に速くて相当苦労した.集合・位相・行列の基礎的事項を扱うもので,工学的応用を見据えた議論もあって面白かった.「最適化手法」もそうだが,計数数理の数学との距離感はかなり自分に合っている気がする.

課外では,数学の基礎固めを目標に群論や幾何を勉強していた.こいつ毎年のように基礎を固めてるなと言われればその通りだが,実際いまだに基礎を勉強する必要があるのでしかたない.数学の他には,最適化手法や計算量理論を少しかじったりもした.春から夏にかけては,量子コンピュータ微分幾何の自主ゼミに参加していた.

趣味

長らく趣味だったプログラミングからはかなり離れていた.基本的にずっと忙しかったこと,プログラミングをするようなコミュニティから遠ざかっていたこと,などが理由にある.バイトで開発をしたり,計算の理論の最終レポート用に型検査機を書いたり,細々したスクリプトを作ったりはしていたが…….高専プロコンの影響か,ゲーム AI やソルバの製作が結構好きなので,CodinGame とかに出てみたい.

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今年はそこそこたくさんお酒を飲んだ(気がする).ビアバーに連れていってもらったりもして,クラフトビールが好きになった.大学から家までの帰路に酒屋があるので,対面授業のあった日は大抵ビールを買い込んで帰っている.そのせいで懐が結構厳しい.

そのほか

自動車免許を取った.帰省中に通いで取ったが,教習所が色々とえらいところで,なかなか苦しい 3 週間だった.教習所を卒業してから一度もハンドルを握っておらず,立派なペーパードライバーになる予定.

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実は 2017 年から漢検準 1 級・基本情報・応用情報・TOEIC・数検とほぼ毎年何かしらの資格を取っていたが,今年は何も取らなかった(自動車免許を除けば).文系の資格に興味があったので行政書士試験の参考書を買ってみたりしたが,モチベーションの調達に失敗して挫折した.来年は情報処理安全確保支援士を受けたいと考えている.

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一人暮らしを始めたので一年中家事に追われていたが,あまり上達した気がしない.自炊に関しては,そもそも自室のキッチンが狭いので凝った料理は難しく,時間や手間を考えると学食で済ませることが多くなりつつある.

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朝に弱いので大学をサボりがちにならないか心配だったが,かなりなんとかなっている.A セメに関しては毎日 2 限からなので,そこまで苦にならないのもある.とはいえ,2 限スタートだと毎晩 0 時から 4 時くらいまでを虚無に溶かしてしまうという深刻な問題があり,もう少し有意義に過ごしたいものである.

読書

かなり読書量が減った.特に A セメ以降は生存に忙しくほとんど読めなかった.

豊下楢彦昭和天皇マッカーサー会見』は若干古めの本だが,内容は素晴らしい.著者は『安保条約の成立』で有名.そちらも合わせて読みたいところではある.吉田裕『昭和天皇終戦史』も隣接するテーマを扱っており,続けて読むと面白いかもしれない.

伊藤之雄原敬 外交と政治の理想』(上下巻)は,原敬に関する最近の研究成果が詰まった良書だった.評伝としてもそこそこボリュームが多く,読み応えがある.

丸山眞男丸山眞男セレクション』は,自動車教習所の待ち時間に読んでいた.岩波から出ている『超国家主義の論理と心理』『政治の世界』に所収の論文もあり,若干の重複がある.とはいえ両書を読んだのも随分昔のことで,忘れていた内容も多々あり,結構新鮮な気持ちで読めた.本書所収の『人間と政治』から,特に印象に残った一節を引用する.

しかし知識人の困難な、しかし光栄ある現代的課題は、このディレンマを回避せず、まるごとのコミットとまるごとの「無責任」のはざまに立ちながら、内側を通じて内側をこえる展望をめざすところにしか存在しない。そうしてそれは「リベラリズム」という特定の歴史的イデオロギーの問題ではなくて、およそいかなる信条に立ち、そのためにたたかうにせよ、「知性」をもってそれに奉仕するということの意味である。なぜなら知性の機能とは、つまるところ他者をあくまで他者としながら、しかも他者をその他在において理解することをおいてはありえないからである。

善教将大『維新支持の分析』は,維新の躍進をポピュリズム論として片付ける既存の論調を批判し,実証分析の観点から有権者の合理性を見出す内容.全体的に硬めの学術書といった趣で,政治学とあまり関わりがない身からすると読み進めるのがやや大変だった.内容は示唆に富んでおり,とても面白い.書かれたのは 17 年だが,今年の衆院選にも相当当てはまる記述だと思う.

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こうして読んだ本を眺めると随分ジャンルが偏っていることに気付く.易きに流れ,読みやすく予備知識のある近代日本史の本ばかり読んでいる.昔はもっと多様なジャンルの本を読んでいた気がするが…….

書籍部には対面授業があるたびに足を運んでいろいろな本を買ったが.積読量の時間微分がつねに非負なので,いい加減買う量を減らした方がいいのかもしれない.

それと,ここには挙げていないが,総合雑誌をときどき購入して読むようになった.定期購読も考えたが,特集にあまり関心を持てない月が多かったので取りやめた(幅広い分野に触れるためにはそういう号も読んだ方がいいんだろうとは思うが).それよりは,2 年前に取っていた『日経サイエンス』をふたたび購読したい.

第 4 次伊藤内閣の組閣に当たり原敬が西園寺公望へ宛てて送った書簡

入閣運動に相当力を入れている様子が見て取れる.

入閣時のポストとして陸海軍大臣を選択肢に挙げるなどかなり無理を言っているが,この 20 年ほどあと,ワシントン会議の首席全権として派遣された加藤友三郎海相に代わって首相の原が海軍省事務取扱を兼ねることで,部分的に文官の海相(に準ずるポスト)への就任が実現される.原内閣では軍政を文官に移管しようとする動きが僅かながら見られるが,この書簡は,そうした原の志向が 20 年前からあったことをおぼろげに示している.

なお,原文でカタカナだった部分はひらがなに改め,かな遣いはそのままとした.

 

 拝啓 昨日は御邪魔仕候.扨身上の義に付毎々御配慮被成下深謝之至に奉存候.昨日も鳥渡申上置候通色々用事も停滞仕居候に付明晩之汽車にて一と先つ帰坂仕用事相済次第再上之見込に候.

昨日滄浪候之御内話は絶対的に今回入閣出来ずとも限らされとも万一入閣出来さる時は云々との御趣意に拝承仕候処,もし入閣するとせは小生之方にては其刻も申上候通何れ之省にても異議無之候.人は海陸軍之外など申候へ共海陸軍にても少し他国にも実例有る通文官より御採用之事に御断行之御決心なれは小生は夫れも辞せさる所に候得共,是れは到底行はれ間敷.兎に角何れ之省にても小生之方にては高言之様には候得共其任に堪へさるべしなとの考は毛頭無之候に付,もし入閣相成候事ならは別に小生に御相談被下候に及はず辞令書も誰か代りにて拝受被下候て異議無之候.入閣之場合には電報又は電話にて御申越被下候様に昨日願置候得共再考仕候へは夫も必要なしと存候間,御決行之上其旨御通知被成下候て差支無之候.

右様申上候へは頻りに入閣熱心之様に候得共,是れは毎々申上候通小生は入閣致候とて利益更に無之却て収入は減じとさくさ紛れ之入費有之上に退閣後は再ひ何か之事業を見出さヽるを得ずと申如き色々之不利益有之候得共,小生も御承知之通多年政界に在る已上は何れ之方面にか十分之技倆を振え申度など自負心も有之且つ先日来之行掛は今日に至り人繰之都合出来ずなと之申様なる事情には無之と存候故,其心得を以て諸事決行し来りたる事にも候間右様申上置次第に候.

前陳之事情は何卒御序之節重ねて滄浪候に御内話なし置被下候様奉願上候.取急き右申述候.匆々頓首

 十月十六日 敬

 西園寺侯爵閣下 侍史

劣モジュラ性と限界効用逓減性が同値であることの証明

結構簡単だけど日本語だと見つからなかった(探し方が悪かっただけかもしれない)のでメモ.


 U を集合, f : 2^U \to \mathbb{R} を集合関数とする.
Dfn. 1.  f が劣モジュラ (submodular) であるとは, \forall X, Y \subseteq U, \; f(X) + f(Y) \ge f(X \cup Y) + f(X \cap Y) であること.
Dfn. 2.  f が限界効用逓減 (diminishing returns) とは, \forall X \subseteq Y \subseteq U, \; Z \subseteq U \setminus Y, \; f(X \cup Z ) - f(X) \ge f(Y \cup Z ) - f(Y) \ であること.


Prop. 1.  f が劣モジュラ  \Leftrightarrow  f は限界効用逓減.

pf.
 \Rightarrow の方向:(これはかなり簡単).
 f が劣モジュラと仮定する.仮定より,任意の  X \subseteq Y Z \subseteq U \setminus Y に対して  f(X \cup Z) + f(Y) \ge f(Y \cup Z) + f(X) が成り立つ(劣モジュラ不等式において, X X \cup Z とした).したがって,
 f(X \cup Z) - f(X)  \ge f(Y \cup Z) - f(Y) である.

 \Leftarrow の方向:
 f が限界効用逓減であると仮定する. X, Y\subseteq U を任意に取る. X = Y であれば  X = Y = X \cup Y = X \cap Y だから劣モジュラ不等式は明らかにしたがう.以下, X \neq Y と仮定する.
 X' = X \cap Y とすると, X' \subseteq Y \subseteq U である.また, Z = X \setminus Y とすると, Z \subseteq U \setminus Y である.このとき,仮定より
 f(X' \cup Z) - f(X') \ge f(Y \cup Z) - f(Y)
となるが, X' \cup Z = X, \; Y \cup Z = X \cup Y, \; X' = X \cap Y なので, f(X) - f(X \cap Y) \ge f(X \cup Y) - f(Y) であり,変形すると,
 f(X) + f(Y) \ge f(X \cup Y) + f(X \cap Y)
が言える.(証明終)

高専生活を振り返って

通っていた高専を無事卒業したので,5 年間で印象に残ったことをトピックごとにまとめてみる.

 

授業

いろんな授業があったが,特に覚えているものをいくらか挙げてみる.

政治経済 (2 年)

名物教員の授業で,90 分間ひたすら喋るタイプのもの.話が面白かった.試験が厳しいと言われており,自分も 90 点台後半を取ったことはなかった.とはいえ簡単すぎるよりは難しすぎる方がよいと(個人的には)思う.

熱力学概論 (3 年)

融合学科ということで,情報系なのに熱力学が開講されていた.しかし中身は相当しっかりしていて,暗記にも計算にも偏重しない,教員の本気度を感じるものだった.これに限らず,融合系科目はどれも質の高いものが多かった.

計算科学 (3 年)

要するに数値計算法.内容はところどころ忘れてしまったが,有益な科目だった.冬休みに乱数生成法のレポートを本気で書いたら教員に褒めていただいたのはいい思い出.

制御工学 (4 年)

成績評価のウェイトが前期中間試験から順に 1:2:3:4 という変わった科目.大変だったが,自分としては珍しく入念に予習復習して臨んだこともあって好成績を取れた.

情報理論 (5 年)

プログラミングが苦手でネットワークコースに来た学生を迎え撃つ数学もりもり科目.最後の方は授業についていけている学生が自分くらいだった.試験は簡単だったが.

 

ここには書ききれないが,他にも面白かった授業,大変だった授業,つらかった授業など,多くある.世の高専生が言うように"虚無"の授業もないことはないが,そんな授業からも汲み取れる点は確かにあった*1

それなりに勉強したこともあり,卒業式では卒業生総代を務めさせてもらった上,優秀賞を頂いた.実は 5 年次だけ席次が 1 位でなく,三冠を飾れなかったのは残念ではあるが.

教員

卒研指導教員

この人に出会えたのは高専生活最大の収穫と言っていい.自分が 2 年生のときに着任した若い先生で,よく研究室で雑談した.ソシュール三島由紀夫から楕円曲線論に至るまで本当にいろんな話をしたし,これだけ広範に話題が合う相手は人生で初めてだったので感動した.

卒研をはじめとして,様々な場面で親切にしていただいた.思想 (ideology というより principle) のある人で,折に触れて有益な助言を受けた.真に尊敬できる恩師を得たことは幸運だったと思う.

数学教員 

1 年の基礎数学,3・4 年のゼミなどを担当していた先生.

特に,4 年の数学特別補習*2では,途中から授業を切る学生が続出した*3ので,実質マンツーマンで数学を見てもらった.

2 年次以降は学科が違ったこともあって授業以外での接点は少なかったが,何かと良くしていただいた.卒業式前日,挨拶に伺ったところ,記念にと高木貞治の『初等整数論講義』を譲ってくださった.大事にしたい.

 

そのほか,部活動の顧問や各学年の担任教員には大変お世話になった.

部活

シス研に入って色々やった.わりあい充実していたように思う.

当初は Web プログラミング系でやっていこうと考えていたので,Ruby on RailsPHP を触っていた.1 年のときには先輩のお誘いで Hack U へ参加し,Rails で Web アプリケーションを一から組んだ.後期中間試験そっちのけで Rails チュートリアルを終わらせたのはいい思い出.

その後,パソコン甲子園や JOI の本選出場を通じて,徐々に競技プログラミングの方に向いていった.3 年次ではプロコン競技部門に出場した.結果は伴わなかったが,あの手のゲームソルバを作るのはとても楽しかった.

4 年次以降は,受験勉強や音楽性の違いなどもあって若干足が遠のいた.とはいえ最後まで籍は置いていたし,たまにお節介というか老害ムーブもかましつつ,ちょくちょく関わりを持っていた.

 

シス研での活動を通じてたいへん多くの経験を積めたし,先輩方からもたくさん知見を頂いた.自分も部にいくらか貢献できていたらいいなと思う.優秀な後輩たちには今後ともぜひ頑張ってほしい.

進路

数年前からコツコツ勉強した甲斐あって無事第一志望の大学に合格し,4 月から東京で暮らすことになる.

個人的に,都会が苦手なこと,自分が極度に内気であること,初めての一人暮らしとなること,などなど不安要素が非常に多く,素直に新生活を喜べない状態にあるが,なんとか頑張っていきたい.

将来の不安についていろいろこぼしていたところ,指導教員から以下の言葉を頂いた.先生なりの励ましというかアドバイスだと思う.本当にありがたい.

どれほど悲しみで一杯でも,なにか気晴らしになるようなことに引き込まれたら,その間は幸せになれる.

(パンセ 断章 139 より)

おわりに:私の高専生活とは何だったのか

唐突だが,「うらら迷路帖」という漫画がある.かいつまんで説明すると,生き別れの母を探すために占いの街・迷路町に来た主人公・千矢が,占いの修行を通して成長していく話である.

個人的に,うらら迷路帖のキーワードは「成長」と「出会い」だと考えている.

千矢は当初,母を探すことだけを目的としており,「お母さんに会えないなら,この町にいる意味なんかない」と言い切る.

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(はりかも『うらら迷路帖 1』42 ページ,芳文社,2015 年)

しかし,作品を通じて占いの修行を続け,友人や先生との出会いもあり,終盤では「一番占*4になって,いつか自分の占いでお母さんを見つける」と新しい夢を語るまでになる.

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(はりかも『うらら迷路帖 6』68 ページ,芳文社,2018 年)

 

もう一つ,「出会い」について.うらら迷路帖には,才気煥発な少女・臣が途中から登場する.臣は優等生肌の紺と迷路町で出会い,競い合える相手を得たことを心から喜ぶ.

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(はりかも『うらら迷路帖 4』29 ページ,芳文社,2017 年)

 

翻るに,高専生活で真に得られた(得られる)ものも,また「成長」と「出会い」ではないかと考えている.

自分はプログラマになろうと思って高専に入ったが,高専での学びを通じて数学や情報科学を知り,研究職を志すに至った.高専という,良く言えば多様な,悪く言えば混沌とした環境にいたからこそ,様々な世界を垣間見,新しい目標を抱くことができた.

また,多くの教員や友人と出会い,たくさんのことを学び取れた.先述した通り,自分と話題が合う人間は中学校以前では一人もいなかったので,高専での出会いは新鮮だった.これは学生と教員の距離が近い高専ならではのことだと思う.加えて,学業や部活動で競い合える相手を得たのも,同じく新鮮な体験だった.

高専という組織は毀誉褒貶が激しい.卒業生や在学生が高専について語るとき,よく「高専の環境は素晴らしいが,黙って授業を受けているだけでは何も得られない.自分から動いて高専をフル活用するべきだ」と言われる.この人たちは高専の外に目を向け,外部のイベントなどに参加することに価値を見出している.

その姿勢を批判するつもりは毛頭ないが,自分はむしろ,高専の中での出会いや学びを強調したい.特に,学生と教員(それも,大学院を出た研究者)との距離が近いのは,高専の無二の長所である.後輩たちには是非,教員や優秀な学生との出会いを通して成長し,新しい目標を見つけてほしい.

*1:一例として,力学 II (3 年) を挙げておきたい.担当教員が若く,講義経験が少ないこともあって,どことなくギクシャク感の否めない授業だった.しかし,初回授業でスカラ量とベクトル量について説明したあと,「では,スカラと 1 次元ベクトルは何が違うんでしょうか.この辺の考え方を厳密化するとテンソル解析に繋がります.気になる人は調べてみてください」と話していたのが印象に残っている.高専ではどの授業もその道の研究者が教えるので,ときたま含蓄のある発言がポロッと出る.そういう部分を拾っていくことに楽しみがある.

*2:編入志望者向けの演習科目.

*3:単位が出ない,7 限目で出席がしんどい,などいろいろ理由があるっぽい.

*4:迷路町では占い師が実力によって十番占(見習い)から一番占まで分けられている.

jsarticle + amsthm で付録を使うと定理番号がおかしくなるやつ

卒論執筆のとき困ったので備忘録として.

問題

jsarticle + amsthm において,付録で

\begin{thm}
ほげほげ
\end{thm}

みたいなことをすると,

定理付録 A.1 ほげほげ

として出力される.(本当は,「定理 A.1」のようにしたい)

 

これを防ぐために

\def\thesection{\Alph{section}}

を入れると,今度は目次とかの表示が「付録 A. ぴよぴよ」ではなく「A. ぴよぴよ」となる.

これは,amsthm が定理番号を出力するときに \thesection を呼んでいること,jsarticle では \thesection に「付録」(\presectionname)まで含めていることの合わせ技で発生している.

bxjscls を使うという解決策(参照)があるらしいが,色々あってうまくいかなかった*1

解決策

ここ

\usepackage{regexpatch}
\makeatletter
\regexpatchcmd{\@xthm}
{\c{csname} the\cP\#3}
{\c{@arabic}\c{@xp}\c{@nx}\c{csname} c@\cP\#3}{}{}
\makeatother

を拝借する.プリアンブルに置くだけでよい.

おわりに

なんというか秘伝のタレ感がある.本質的には,指定の卒論スタイルファイルのドキュメントクラスを変更することで解決すべきな気がする.

 

*1:卒論スタイルファイルが指定されており下手にいじれなかった,とか.

ELECOM のトラックボール HUGE (M-HT1URX) のチャタリングを直す

はじめに

M-HT1URX が購入後 8 ヶ月くらいでチャタるようになったので分解修理しました*1

分解にあたっては以下の記事を参考にしたので,本記事は半分くらいそれの焼き直しになっています.

エレコム製トラックボールHUGEのチャタリング修理とギシギシ改善方法 | 日本霜降社

 

本記事を読んで分解される場合は自己責任でお願いします.

 

分解する

1. 裏面のゴムを剥がす

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4 つ付いてるゴムをべりっと剥がします.

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丁寧に剥がさないとこんな風に接着剤が残ってかなり嫌な感じになります.

 

2. ネジを外す

ゴムの後ろにあった 6 つのネジと,ボールの裏にある 2 つのネジを外します.前掲記事ではトルクスネジとなっていましたが,自分の場合は普通のプラスネジでした.

3. 開ける

横から本体をこじ開けます.当初は全体(手のひらを置くとことか)を一気に開けると思い込んでおりやたら苦戦しましたが,チャタリングを直すだけなら左側(左クリックやホイールがある部分)だけ外せばよいです.

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いま気づいたんですが,側面のほこりがすごい.

 

女子小学生すぎて外すのにめちゃくちゃ苦労しました.小学生の方が分解するときは大人に手伝ってもらうとよいと思います.ちなみに私の握力は 28 kgf とかです.

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ベキッって音がして一瞬ビビりましたが,なんかいい感じに外せました.

 

白い帯みたいなやつを外すと左側が取れます.写真には写っていませんが,接続部分にある黒いパーツをカチっと上げてやると白い帯は外せます.

 

4. スイッチに接点復活剤を吹きつける

やっと本丸にたどり着きました.記事では一瞬ですが,実際には持ち前の不器用さを遺憾なく発揮してここまで 30 分くらいかかっています.

3 つあるプラスネジを外せば基盤を取ることができます*2.ちなみにこのときネジを 1 つ失くしましたが,残り 2 つで固定できてればまあ動くだろという適当な推測のもと続行しました.こういう杜撰な人間がエンジニアの卵として高専を卒業することに不安を感じる.

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ホイールが汚れている気がしますがひとまず無視して,スイッチを直します.基盤の左下にある直方体が左クリック用のスイッチです.こいつに接点復活剤を吹きつけます.

 

接点復活剤はコメリとかで買えます.100 均にあるだろと高をくくっていたら全然そんなことはなくて,900 円くらいしました.

 

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エイムが下手すぎて周辺がびちょびちょになっている…….

 

前掲記事に

たらした後は、ピンセットの先などの汚れていないモノでスイッチを30回くらいカチカチして、もう1回たらしてカチカチして、というのを4セットくらいやりましょう。

とあったので,その通りにします. 

 

5. 元に戻す

これまでと逆の順番で戻していきます.つまり,

基盤のネジをしめる→白い帯を繋げる(黒い留め具をしめる)→左側部分を本体に嵌める→ボール裏のネジをしめる→ゴム裏のネジをしめる→ゴムを貼り付ける

の順でやればよいです.白い帯を繋げるときは裏表に注意します.左側部分を嵌める前に一度マウスを PC に繋いで動作確認をするとよいと思います.

おわりに

以上でチャタリング修理は終わりです.直す過程でどこかをうっかり壊している可能性もありますし,そうでなくてもどうせ数ヶ月したらチャタリングが再発するそうなので,そうなったら潔く新品を買いましょう.

実はマウスの分解は人生初だったので死ぬほど疲れました.労力を考えるとはじめから新品を買った方がよかったかもしれません.

 

*1: 8 ヶ月というのは短いように思えますが,一時期リモート授業とかで一日中 PC に張りついていたのでまあ自然なところでしょう.

*2:別に基盤を取る必要はないかもしれません.

シャミ子のしっぽの材質を偏微分方程式から求める

はじめに

『まちカドまぞく』1 巻に,以下のようなおまけイラストがあります.

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(伊藤いづも『まちカドまぞく 1 巻』86 ページ,芳文社,2015 年)

 

かわいいですね.

 

「冷たさをかんじるまで 1.5 秒かかる」という記述をもとに,シャミ子のしっぽの材質を推定していきたいと思います. 

前提

以下の仮定を置きます.

  • シャミ子のしっぽは直線.
  • しっぽ先端(もんもがペットボトルを当てている部分)の座標は  0,しっぽ付け根の座標は  L
  • しっぽには神経が通っておらず,付け根の神経で温度を感じる.付け根の神経から脳までの伝達にかかる時間は無視する.
  • 普段,しっぽ内の温度は一様.
  • シャミ子のしっぽの温度拡散率は  \kappa,平熱は  T_0
  • もんもが当てたペットボトルにより,シャミ子のしっぽ先端は  T_c だけ急激に冷やされる.

式をきれいにするため,しっぽ長は以下  L で書くことにしますが,一応ここで  L の値を推定しておきます.

計算

(注意:この節は本質的には熱伝導方程式を解いているだけであり,結論だけ知りたい人は読まなくてもいいと思います)

しっぽ内の温度を  u(x, t) で書きます.Fourier の法則とエネルギー保存則を連立すると,

 \displaystyle{ \frac{\partial u}{\partial t} = \kappa \nabla^2 T = \kappa \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}  }

なる偏微分方程式を得ます.仮定より,初期条件は

 \displaystyle{ u(x, 0) = -T_c \delta (x) + T_0}

です.

この初期値問題を解いて,「冷たさをかんじるまで 1.5 秒」という事実と連立して温度拡散率  \kappa を求めれば,シャミ子のしっぽの材質が分かります.

 u(x, t) x に関する Fourier 変換を  U(\xi, t) とします.適当な条件の元で計算すると,

 \displaystyle{ \mathcal{F}\left[ \frac{\partial u}{\partial t} \right] = \frac{\partial U}{\partial t} }
 \displaystyle{ \mathcal{F} \left[ \frac{\partial^2 u}{\partial x^2} \right] = -\xi^2 U(\xi, t) }

となります.元々の偏微分方程式に代入すると,

 \displaystyle{ \frac{\partial U}{\partial t} = -\kappa \xi^2 U}

という常微分方程式になります.これを解くことはやさしくて,

 \displaystyle{ U(\xi, t) = \mathcal{F} [u(x, 0)] \exp(-\kappa \xi^2 t) }

となります.あとは両辺を逆 Fourier 変換すれば  u が求まります.

 

 \displaystyle{ \mathcal{F}^{-1} [ \exp(-\kappa \xi^2 t) ] = \frac{1}{2\sqrt{\pi \kappa t}} \exp\left(-\frac{x^2}{4\kappa t}\right) }

を利用すると,

 \displaystyle{ u(x, t) = \frac{1}{2\sqrt{\pi \kappa t}} \exp\left(-\frac{x^2}{4\kappa t}\right) * u(x, 0) }

と書けます.

 

最終的に,

 \displaystyle{ u(x, t) = \frac{1}{2\sqrt{\pi \kappa t}} \int_{-\infty}^{\infty} \{ -T_c \delta(x - \zeta) + T_0 \} \exp\left(-\frac{\zeta^2}{4\kappa t}\right) d\zeta }

 \displaystyle{ = -\frac{T_c x}{2\sqrt{\pi \kappa t}} \exp\left(-\frac{x^2}{4\kappa t}\right) + T_0 }

が求まりました.

 

ここまでで結構疲れた気もしますが,更に  \kappa を求める必要があります.以下, u_L (t) = u(L, t) とします.加えて,やや強引ではありますが,「つめたさを感じる」を「 u_L(t) が極小値を取る」と解釈します.すなわち,

 \displaystyle{ \frac{du_L}{dt} = \frac{T_c L}{8 \kappa t \sqrt{\pi \kappa t} } \exp \left(-\frac{L^2}{4 \kappa } \right) \left( 2 \kappa - \frac{L^2}{t} \right) }

 t= \tau \; (= 1.5 \, [s]) で  0 となるような  \kappa を求めればよいわけです.

 

したがって,

 \displaystyle{ \kappa = \frac{L^2}{2\tau} }

となります.お疲れさまでした.

しっぽ長  L について

あとは  L さえ測定すればよいのですが,力尽きたので漫画から適当に見積もります.

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(伊藤いづも『まちカドまぞく 1 巻』82 ページ,芳文社,2015 年)

これを見るに,だいたい  L = 1.5 \, [m] としておけばよいんではないでしょうか.

物質の推定

 \kappa = 1.5^2 / (2 \times 1.5) = 0.75 \, [m^2 / s] となりました.

Thermal diffusivity - Wikipedia などを見ると,最も熱拡散率の高い物質で  0.0012 \, [m^2 /s ] であり,黒鉛,純銀,純金などの高熱拡散率の素材でも  0.75 \, [m^2 / s ] を越えることはないようです.

要するに,シャミ子のしっぽはこの世ではありえないほど敏感ということです.かわいいですね.

おわりに

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(伊藤いづも『まちカドまぞく 1 巻』86 ページ,芳文社,2015 年)

 

どこかで計算をミスしている気しかしないので気づいたら教えてください.