はじめに
Fourier 級数展開や Fourier 変換には多くの応用がある.この記事では,小ネタとして,[1] より Poisson の和公式を紹介する.
ステートメントと証明
Thm. (Poisson の和公式)
実数値の急減衰関数 の Fourier 変換を としたとき,以下の公式が成立する.
pf.
は急減衰だから, は 級かつ周期 の関数である.Dirichlet の定理より, の Fourier 級数展開は一様収束する. の Fourier 係数を と書くと,である.さて,
だが, の Fourier 和の一様収束性から総和と積分を交換できる.すなわち,
と変数変換すると,
を得る.したがって,
(証明終)
例 1. Gaussian
テータ関数とは, に対して
で定められる関数である. なる変数変換に関して,以下の等式が成り立つ.
Prop. (Jacobi の等式)
この等式の証明に Poisson の和公式を利用できる.具体的には,Gaussian に対して Poisson の和公式を適用する. より,
例 2. 偶関数
が偶関数の場合に Poisson の和公式を用いると,数値解析において重要である Euler--Maclaurin の公式が導かれる.まず,若干テクニカルな変形から入ろう.
したがって,
さて,右辺に含まれる総和の各項で部分積分すると,
となる.これを繰り返して整理することで,
が得られる.ただし, は Bernoulli 数である.これは, の における積分を, での関数値の総和で近似したもの (台形則近似) の誤差評価を与えているとみなすことができる.
多次元への拡張
Poisson の和公式は多次元においても成り立つ.1 次元の場合は についての総和を考えたが,多次元では格子点での関数値を足し上げることになる.念のため,格子の定義を書いておく.
Def. (格子)
を, の (線形空間としての) 基底とする.このとき, を, の格子と呼ぶ.また, を格子の体積と呼ぶ*1.
Def. (双対格子)
の格子 に対して, を の双対格子と呼ぶ.
証明は 1 次元の場合と似通っているため,ここでは定理のステートメントのみ述べる.
Thm. (多次元における Poisson の和公式)
を の格子として, を 上の急減衰関数とする.このとき,
*1:体積は基底の選び方によらない.すなわち,体積は well-defined である.