東京で理工系書籍を扱っている書店のまとめ

早いもので東京へ引っ越して 1 年半になる.基本的には毎日ひきこもっているので土地勘は大して養われていないが,大学生ということもあり書店にはしばしば通うようになった.

東京には無数の書店がある.とはいえ,理工系の書籍 (特に洋書) をしっかり扱っている店はそう多くない.この記事では,自分が知っている範囲で,理工系の本が買える書店をまとめた.

専攻が数理工学なので,数学・情報科学の本がどの程度あるか,という観点に偏っていると思う.たとえば生物学・化学や建築学については手薄だと思うので,そのあたりを専攻している人にはあまり参考にならないかもしれない.

1. 大型書店

基本的に,大型書店へ行けば,刊行中の本はだいたい手に入る.本を買うというだけならどこへ行っても大差がない (と思う) ので,アクセスしやすい店へ行けばいい.

丸善 丸の内本店

東京駅丸の内北口を出てすぐのところ (丸の内オアゾ内) にあり,理工系書籍は 3 階.東京駅はターミナル駅なので何かのついでにアクセスしやすく,個人的に大型書店の中では一番よく行く.品揃えも充実している.

圧巻は 4 階の洋書フロアで,壁一面に数学書が並んでいる.知る限りでは最も洋書の品揃えがよい.Springer の数学書を半額で売っている一角もあり,学生でも手の届く価格帯の本が多い.

ジュンク堂 池袋本店

JR 池袋駅の東口を出て少し歩けば着く.主観だが,理工系書籍 (和書) の品揃えは都内で一番だと思う.記憶が正しければ店舗全体で 9 階から地下 1 階まであり,最上階から順に降りていくと楽しい.洋書はそれほど置いていなかった.

紀伊國屋書店 新宿本店

東京メトロ新宿駅と直結した建物にある.新宿という街に漠然とした苦手意識があったのでしばらく訪れていなかった.店内がやや狭く,他の大型書店と比べると品揃えの点で若干見劣りする.新宿にあるのでアクセスは非常によく,東大生は本郷三丁目から一本で行ける.

Books Kinokuniya Tokyo

上述の紀伊國屋書店の系列で,洋書だけを扱っている.新宿駅の南側,タカシマヤタイムズスクエアの中にあり,代々木駅からも近い.1 フロアのみで,理工系は奥の方にまとめられている.品揃えは悪くないが,高度な専門書は多くないので,丸善の 4 階よりは少ないかも.とはいえ,都内で理工系洋書を置いている書店は ここと丸善しかなさそう (他の店をご存知の人がいたら教えてください) なので,貴重な店だと思う.

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上記以外にも大型書店はいくつかあり,どこもそれなりに理工書を扱っている.少なくとも,有名どころ (例えば,齋藤線型代数とか,赤雪江とか,松坂集合位相とか……) や,大学低学年向けに書かれた微積線形代数の教科書・演習書は,どの店にも一通り置いてあると思う.また,最近はどこもコンピュータ系の品揃えに力を入れており,隣接分野である数理最適化や確率論・統計学の本が増えてきているように感じる.

また,今年に入ってから,三省堂書店 神保町本店と八重洲ブックセンターが相次いで (一時) 閉店した.三省堂は改築,八重洲ブックセンターは移転のためらしい.どちらもいい書店なので,数年後生まれ変わった姿に期待したい.

2. 神保町

本の街として知られる神保町にも,理工系を扱う書店はいくつかある.

書泉グランデ

神保町駅を出て,靖国通りを東へ少し歩いたところにある.古書店の並ぶ場所にあるものの,新刊本を置いている.サイズ的には大型書店のカテゴリに入るが,一般向けというよりはマニア向けの書店で,フロアごとに「鉄道」「アイドル」「精神世界」などジャンルを絞った本が並ぶ.4 階が数学書のフロアになっている.数学グッズも売っている.

最上階にイベントスペースがあり,たまにセールを開催している.「訳あり本セール」として,各出版社の数学書や理工書を半額で売っていることがあり,大変助かる.

秋葉原に系列店の書泉ブックタワーがある.そちらは数学書の品揃えは申し訳程度だが,コンピュータ系書籍でまるごと 1 フロアを使っており,応用数学や数理工学をやっている人にとっては見応えがあると思う.

明倫館書店

神保町駅を出てすぐのところにある,理工系専門の古書店.大量の古書が所狭しと並べてあり,最初に入ったときは感動した.大まかに言って,1 階が理学 (数学・物理学など),地下 1 階が工学 (コンピュータ,電子工学など) のフロアになっている.

和書が多いが洋書もしっかり置いてあり,入ってすぐのところにある棚は洋書の数学書で埋め尽くされている.Springer の黄色い背表紙で埋まった棚は圧巻.だいたいの本はここで揃うので,何かしらの教科書が必要になったらとりあえずここへ行くようにしている.

村山書店

靖国通り沿い,書泉グランデの近くに位置する.理工系専門ではないが,数学・物理学の本がけっこう置いてある.シリーズものの数学書や学術文庫の品揃えが多いように思う.また,新しめで状態のよい本が比較的多く,店内も綺麗.神保町をうろついているときにふらっと入りやすい.

3. 東大付近

東大の中には書籍部が,外には学生街沿いの古書店がある.大型書店ほどの品揃えはないが,(学生にとって) アクセスしやすく,大学へ行ったついでに寄りやすい.

生協書籍部

駒場キャンパスと本郷キャンパスにはそれぞれ書籍部がある (柏キャンパスなどにも書店があるらしいが,行ったことがない……).駒場キャンパスでは駒場図書館の向かい,本郷キャンパスでは理学部 1 号館の裏 (第二食堂の下) にある.もちろん,東大に所属していない人でも入れる.

大学内の書店ということもあり,専門書の比率が高い.スペースの都合なのか,本郷よりも駒場の方が品揃えはよいと思う.レイアウトも駒場の方がすっきりしており,店内を見て回りやすい.とはいえ,本郷に通う身としては頻繁に駒場へ行けるわけでもないし,何より大抵の本は本郷でも揃う.全体的にいって,大型書店よりは少し劣るが,それでも相当なものだと思う.洋書も少し置いてある.

東大生協に入っていれば全ての書籍が 10 % 引きになる.これは本当にありがたいシステムで,特に高額な専門書を買うときに威力を発揮してくれる.また,特定の出版社の書籍が 15 % 引きになるセールをときどきやっており,以前は丸善出版東大出版会も対象になっていた.

なお,もちろんのこと東大以外の大学にも書籍部はあり,それぞれの学生に合わせた専門書を販売している.東工大の書籍部には入ったことがあるが,コンピュータ系の品揃えが充実していた記憶がある.

友隣社

赤門前にある,理工系洋書の専門店.オフィスビルの 3 階にあり,あまり小売店っぽい感じではない.店舗と同じスペースに事務所もあり,どちらかというと研究者や大学と直接取り引きするのがメインの会社かもしれない.

店は広くないが,数学系の洋書がたくさん置いてある.コンピュータサイエンスや物理学の本もそこそこあったように記憶している.

棚沢書店

正門前にある古書店で,理工系書籍を扱っている.本郷の古書店数学書をしっかり扱っている店は,知る限りではここだけだった.全体的に安価だと思う.一時期,店前に岩波数学講座がたくさん置いてあった.洋書も若干だが置いてある.理工系専門ではなく人文系の本もあり,岩波文庫がよく揃っていた.

おわりに

自分が知っている限りで,理工系 (特に数学系) の書籍を一定程度以上扱っている書店を紹介した.もとより東京という街に精通しているわけでもないので,他にいい店をご存知の人がいたらコメントで教えてほしい.

最近では通信販売専門の古書店も多く,実店舗にない本でもインターネットで探せば見つかることがある.特に洋書については,Amazon 経由で取り寄せるのが最も確実で簡単だということも多い.とはいえ実店舗ならではの良さももちろんあるので,両者をうまく使い分けられるようになりたい.