2021年を振り返って

個人的に激動の一年だった.

学業

5 年間通った高専を無事卒業し,晴れて大学に編入した.しかし世に言う「人生の夏休み」からは程遠い大学生活で,オンライン授業による人間関係の希薄化・初めての一人暮らしに起因する苦労・過酷すぎる授業や課題,の三重苦で結構つらい感じになっていた.

前期は駒場で主に総合科目と第二外国語の単位を集めることになるが,ロシア語に毎日苦しめられて泣くかと思った.格変化はもう全部忘れた.

時間割の組み方にも問題があり,毎日 5 限が入っていたために帰宅が 19 時半になったりしていた.人生に二周目があればもっと計画的に時間割を組みたい.

個人的に,総合科目の「計算の理論」は面白い授業だった.「常微分方程式」は,数学科教員による授業を初めて受ける身としては学ぶところが多かった.

後期は進学内定者と事実上同じ扱いになり,本格的に専門科目の授業がある.とはいえ物理工学科と同一の時間割なので物理系科目のウエイトが結構大きく,前期に比べて楽になったかというとそうでもない.

A1 タームの「基礎数理」は授業のペースが異常に速くて相当苦労した.集合・位相・行列の基礎的事項を扱うもので,工学的応用を見据えた議論もあって面白かった.「最適化手法」もそうだが,計数数理の数学との距離感はかなり自分に合っている気がする.

課外では,数学の基礎固めを目標に群論や幾何を勉強していた.こいつ毎年のように基礎を固めてるなと言われればその通りだが,実際いまだに基礎を勉強する必要があるのでしかたない.数学の他には,最適化手法や計算量理論を少しかじったりもした.春から夏にかけては,量子コンピュータ微分幾何の自主ゼミに参加していた.

趣味

長らく趣味だったプログラミングからはかなり離れていた.基本的にずっと忙しかったこと,プログラミングをするようなコミュニティから遠ざかっていたこと,などが理由にある.バイトで開発をしたり,計算の理論の最終レポート用に型検査機を書いたり,細々したスクリプトを作ったりはしていたが…….高専プロコンの影響か,ゲーム AI やソルバの製作が結構好きなので,CodinGame とかに出てみたい.

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今年はそこそこたくさんお酒を飲んだ(気がする).ビアバーに連れていってもらったりもして,クラフトビールが好きになった.大学から家までの帰路に酒屋があるので,対面授業のあった日は大抵ビールを買い込んで帰っている.そのせいで懐が結構厳しい.

そのほか

自動車免許を取った.帰省中に通いで取ったが,教習所が色々とえらいところで,なかなか苦しい 3 週間だった.教習所を卒業してから一度もハンドルを握っておらず,立派なペーパードライバーになる予定.

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実は 2017 年から漢検準 1 級・基本情報・応用情報・TOEIC・数検とほぼ毎年何かしらの資格を取っていたが,今年は何も取らなかった(自動車免許を除けば).文系の資格に興味があったので行政書士試験の参考書を買ってみたりしたが,モチベーションの調達に失敗して挫折した.来年は情報処理安全確保支援士を受けたいと考えている.

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一人暮らしを始めたので一年中家事に追われていたが,あまり上達した気がしない.自炊に関しては,そもそも自室のキッチンが狭いので凝った料理は難しく,時間や手間を考えると学食で済ませることが多くなりつつある.

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朝に弱いので大学をサボりがちにならないか心配だったが,かなりなんとかなっている.A セメに関しては毎日 2 限からなので,そこまで苦にならないのもある.とはいえ,2 限スタートだと毎晩 0 時から 4 時くらいまでを虚無に溶かしてしまうという深刻な問題があり,もう少し有意義に過ごしたいものである.

読書

かなり読書量が減った.特に A セメ以降は生存に忙しくほとんど読めなかった.

豊下楢彦昭和天皇マッカーサー会見』は若干古めの本だが,内容は素晴らしい.著者は『安保条約の成立』で有名.そちらも合わせて読みたいところではある.吉田裕『昭和天皇終戦史』も隣接するテーマを扱っており,続けて読むと面白いかもしれない.

伊藤之雄原敬 外交と政治の理想』(上下巻)は,原敬に関する最近の研究成果が詰まった良書だった.評伝としてもそこそこボリュームが多く,読み応えがある.

丸山眞男丸山眞男セレクション』は,自動車教習所の待ち時間に読んでいた.岩波から出ている『超国家主義の論理と心理』『政治の世界』に所収の論文もあり,若干の重複がある.とはいえ両書を読んだのも随分昔のことで,忘れていた内容も多々あり,結構新鮮な気持ちで読めた.本書所収の『人間と政治』から,特に印象に残った一節を引用する.

しかし知識人の困難な、しかし光栄ある現代的課題は、このディレンマを回避せず、まるごとのコミットとまるごとの「無責任」のはざまに立ちながら、内側を通じて内側をこえる展望をめざすところにしか存在しない。そうしてそれは「リベラリズム」という特定の歴史的イデオロギーの問題ではなくて、およそいかなる信条に立ち、そのためにたたかうにせよ、「知性」をもってそれに奉仕するということの意味である。なぜなら知性の機能とは、つまるところ他者をあくまで他者としながら、しかも他者をその他在において理解することをおいてはありえないからである。

善教将大『維新支持の分析』は,維新の躍進をポピュリズム論として片付ける既存の論調を批判し,実証分析の観点から有権者の合理性を見出す内容.全体的に硬めの学術書といった趣で,政治学とあまり関わりがない身からすると読み進めるのがやや大変だった.内容は示唆に富んでおり,とても面白い.書かれたのは 17 年だが,今年の衆院選にも相当当てはまる記述だと思う.

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こうして読んだ本を眺めると随分ジャンルが偏っていることに気付く.易きに流れ,読みやすく予備知識のある近代日本史の本ばかり読んでいる.昔はもっと多様なジャンルの本を読んでいた気がするが…….

書籍部には対面授業があるたびに足を運んでいろいろな本を買ったが.積読量の時間微分がつねに非負なので,いい加減買う量を減らした方がいいのかもしれない.

それと,ここには挙げていないが,総合雑誌をときどき購入して読むようになった.定期購読も考えたが,特集にあまり関心を持てない月が多かったので取りやめた(幅広い分野に触れるためにはそういう号も読んだ方がいいんだろうとは思うが).それよりは,2 年前に取っていた『日経サイエンス』をふたたび購読したい.