数学の基礎に入門したい

1月にやった制御工学が(自分としては)結構はかどったので,同様の形式で,都度学習内容をブログにまとめつつ,数学の基礎的なところをやってみようと思います.幸い試験も終わったし.

教科書には『数理基礎論講義―論理・集合・位相』を使います.

扱う内容は教科書だと「第10章 無限集合論」から「第17章 一様位相と収束」までに相当します.これより前の述語論理とかにも手を出してみたいんですが.まあ時間と相談しつつ考えます.

パラパラとめくってみた感じだと前回ほどテンポよく行かなそうですね.いつまでかかるかちょっと不透明です.夏休みいっぱい使うかもしれないし,(ぼくのことなので)途中で更新が途絶えてしまうという可能性も大いにあります.まあ頑張っていきましょう.

この記事はとりあえずやるぞーっという宣言だけして終わりです.明日から本気出す.

「晩年のエジョフが妻を粛清した」という誤解について

そもそも

ニコライ・エジョフ(Nikolai Yezhov)はソ連の政治家です.スターリン大粛清を行った時期(1937年前後)に NKVD(内務人民委員部)のトップとして絶大な権力を握り,大粛清の実行役を務めました.

彼は大粛清の暗鬱で陰惨なイメージと常にセットで語られます.1937~1938年はエジョフシチナ(エジョフ時代)と呼ばれ,嫌悪されています.しかしながら,大粛清の究極的な責任はあくまでスターリンにあることが研究を通してかなり明らかになってきています.

エジョフが言及されるときの頻出エピソードが,「晩年は疑心暗鬼が高まり自分の妻をも粛清した」というものです.たとえば,Wikipedia 日本語版には,

連日のように粛清を繰り返したエジョフは、晩年には疑心暗鬼となって側近や家族まで疑うようになり、自身の妻までも粛清している。

― ニコライ・エジョフ - Wikipedia 日本語版(閲覧:2019年8月2日)

とあります.しかしながら,「疑心暗鬼となって……自分の妻までも粛清している」というのはほとんど嘘です.にもかかわらず,「大粛清を実行した狂気の人間」というイメージとうまく合致するためか,(少なくとも日本のインターネットにおいては)かなり多く言及されています.この誤解を解くため,晩年のエジョフとその妻について記しておきます.なお,以下の記述はほぼサイモン・セバーグ・モンテフィオーリ『スターリン―赤い皇帝と廷臣たち』に依拠しています.

いきさつ

先述した通り,エジョフは大粛清の実行役でした.しかしながら,1938年に入ったころ,「反動分子の摘発があまりにも雑すぎて国家運営に支障を来している」といった理由から,スターリンの不評を買うようになってきます.これには,そろそろ大粛清をやめたいと考えていたスターリンの意向や,エジョフの地位を狙っていたベリヤ(Lavrentiy Beria)の根回しも関係しています.

ともかく,エジョフは1938年中旬以降ほとんど失脚します.同時に,エジョフの妻であるエヴゲーニャ(Yevgenia Yezhova)もきわめて危険な地位に追い込まれました.エヴゲーニャは性的に奔放な女性で,ソ連の文学サロンに出入りしては男遊びを繰り返していました.ちなみに,彼女と性的関係のあった作家や詩人はこの後ほとんど死にます.

エヴゲーニャにはロンドン滞在の経験がありました.これを利用し,彼女をイギリスのスパイとして告発しようと策動したのが先述のベリヤです.エジョフはこの工作を知り,エヴゲーニャに離婚を申し出ました.注記しておきたいんですが,これはエジョフの利己的な考えから出た行動ではありません.当時,離婚によって夫婦セットでの粛清を避けるのは有効な防衛手段だったからです.

しかしながら,エヴゲーニャはこれらの政治的危機に耐えられず,精神を病んでいきます.妻を粛清の魔の手から守ろうとするエジョフの工作もあり,彼女はクリミアへ休養に出かけることとなります.このとき彼女がエジョフに書き送った手紙が残っています.

コリューシェンカ![引用者注:エジョフの愛称.「コーリャ」も同じ] ……私の心からの願いは……自分の人生の主人公でありたいということです。愛しいコーリャ! ……自分が犯してもいない罪の疑いをかけられては,到底生きていかれません……

エジョフの友人や秘書たちが続々と逮捕され,エジョフとエヴゲーニャにかけられた首縄が徐々に締まりつつあるなか,エヴゲーニャはうつ病の診断を受け,モスクワ近郊のサナトリウムに入院しました.彼女はスターリンに絶望的な調子の手紙を書きます.

私は生きる屍のような気持ちです.一体どうすればいいのでしょう?

しかし,スターリンからの返事はありませんでした.そうしているうちにも,エジョフとエヴゲーニャはどんどん危険な地位に追いやられていきます.政治局はエジョフの膝下であった NKVD について「きわめて重大な欠陥があった」と非難する決議を採択しました.

絶望したエヴゲーニャはついに自殺を決意し,エジョフに睡眠薬を送ってほしいと懇願します.エジョフは妻の頼みを聞き入れ,致死量の睡眠薬を病院に送り届けました.エヴゲーニャが睡眠薬を過剰摂取して昏睡に陥ったのは1938年11月19日,死去したのは11月21日のことです.

 

このエヴゲーニャの最期から分かることはなんでしょうか.

少なくとも,エジョフがエヴゲーニャを粛清したとは到底言えません.エジョフに「性的スキャンダルのつきまとう妻を生かしておくと自分の身も危うい」みたいな保身的考えが無かったと断言することはできません.しかし,エジョフが妻を explicit に粛清したと見ることは不可能です.生きる望みを失ったエヴゲーニャの頼みを聞き入れ,睡眠薬を送ったエジョフの行為は,優しさとか愛とかの表れでこそあれ,疑心暗鬼の発露ではないはずです.

由来

そもそも「晩年のエジョフが妻を粛清した」という情報はどこ由来なのでしょうか.先に引用した Wikipedia の記述にはソースが明記されていません.ちょっと謎です.1991年以前の史料が入手困難な時代にこういう推測がなされていたという可能性はありますね.とにかく気になるところです.どなたかご存知ありませんか.

 

ヘヴィテールの話

はじめに

試験週間にこんばんは.

試験勉強をサボって適当にブラウジングしていたら,たまたまヘヴィテールに関する情報へ行き当たりました.ちょっと面白い分布のことを知ったので書き記しておきます.

おそらくですが,この分布は多少なりとも統計を学んだことのある人にとっては常識だと思います.当然,この記事に特筆性はありません*1.個人的に興奮したから書くだけです.許してください.

Cauchy 分布

Cauchy というのはあの Cauchy 列とか Cauchy-Riemann の式とかの Cauchy です.

確率密度関数
 \displaystyle{ f(x) = \frac{1}{\pi (1 + x^2)} }
で与えられるような分布を標準 Cauchy 分布と呼びます.こいつはこんな↓感じの見た目をしています.
f:id:villach:20190727223515p:plain
ね,かわいいでしょ.こいつの性質について見ていきます.


まず,大雑把な感想として,Cauchy 分布は正規分布に形が似ています.平均を中心として左右対称だし.
そんでもってこいつの最頻値は見ての通り  0 です.


で,ここからが面白いんですが,Cauchy 分布は期待値を定義できません.どう見ても平均は0なのに.素直に計算してみましょう.

 \displaystyle{ \mu = \int_{-\infty}^\infty \frac{x}{\pi (1 + x^2)} dx }

あーめんどくさい でも頑張って積分しましょう(置換するだけです)

 \displaystyle{ =\lim_{C_1 , C_2 \to \infty } \frac{1}{2 \pi} \{ \log (1 + C_1^2) - \log (1 - C_2^2) \} }

これは  C_1, C_2 の持っていき方によって任意の値を取ります. C_1, C_2 は独立なので.

なぜこんなことになるのでしょうか.正規分布はあれほど素直だったのに.理由は Cauchy 分布がヘヴィテールであることらへんに存在しているらしいです.つまり,外れ値の生じる確率がそれなりにあるので無視できないということっぽい.

期待値が定義できないので当然分散と標準偏差も考えられません.中心極限定理も成り立ちません.


こんな分布を考えて何が嬉しいかというと,たとえば株価や為替の分布に使われているそうです.相場が極端に動くことはそこまで珍しい現象でもなく,正規分布よりこっちを使うほうが良い近似になるとか.それから,年間最大1時間降雨量のような,これまた極端に動き得る数値の分布にも使われるみたいです.

おまけ

ここまで読んでくれた同クラスのみんなのためにおまけをつけました.Poisson 分布  P_0 (\lambda) の平均が  \lambda に等しいことの証明です.なぜこれを書くかと言えば,確率統計前期末試験の最終(証明)問題として持ってこられるのはこのくらいしかないと考えたからです.でも少しテクニカルなので出ないかもしれません.まあ出なくても手の運動になるのでよいでしょう.

Poisson 分布の確率密度関数
 \displaystyle{ f(k) = \frac{\lambda^k}{k!} e^{-\lambda} \; ( k \ge 0 ) }
で与えられます.また素直に計算してみます.

 \displaystyle{ \begin{eqnarray} \mu &=& \sum_{k = 0}^\infty k \frac{ \lambda^k}{k!} e^{-\lambda}  \\ &=& \sum_{k = 1}^\infty \frac{\lambda^k}{(k-1)!} e^{-\lambda} \\ &=& \sum_{k = 1}^\infty \frac{\lambda \; \lambda^{k-1}}{(k-1)!}  e^{-\lambda} \\ &=& \lambda   e^{-\lambda} \sum_{k = 1}^\infty \frac{\lambda^{k-1}}{(k-1)!} \\ &=& \lambda   e^{-\lambda} e^\lambda \\ &=& \lambda \end{eqnarray}}

よし(適当)*2

分散も似たような感じで求まります.


ちなみにですが,これが出題されなかった場合は正規分布の平均・分散を求めさせるやつが出ると踏んでいます.よろしくおねがいします.

追記(2019/09/16)

応用数学(Fourier 変換)の試験で Cauchy 分布と関連した問題が出たので,今更ながら詳しく書いておきます.係数とか問題文はうろ覚えなので適当です*3

問題の内容は要するに  \displaystyle{ \int_{-\infty}^{\infty} \frac{1 + ix}{x^2 + 4} dx} を求めさせるもので,まあ普通にやっていけばよいのですが,問題用紙に書いてあった一文が非常に怪しかった.

ただし, f(x) が奇関数ならば  \displaystyle{  \int_{-\infty}^{\infty} f(x) dx = 0 } であることを利用してよい.

これはなんだぁ~? 証拠物件として押収するからなぁ~?(ねっとり)

 f(x) が奇関数なのに  ( -\infty, \infty) 積分しても決まった値に収束しない関数があるのはこの記事で書いてきた通りです.というか Cauchy 分布の確率密度関数がまんま問題の関数になってます.

この問題の場合は  \displaystyle{ \int_{-\infty}^{\infty} \frac{ix}{x^2 + 4} dx} 積分値が  0 になるとか言っちゃわずに解決できるのでそっちを使いましょう. {x}/{(x^2 + 4)} は実関数なので,

 \displaystyle{ \int_{-\infty}^{\infty} \frac{1 + ix}{x^2 + 4} dx = \int_{-\infty}^{\infty} \frac{1}{x^2 + 4} dx + i\int_{-\infty}^{\infty} \frac{x}{x^2 + 4} dx}

とすれば実部同士虚部同士を比較することで計算できます.言い忘れてましたが積分値自体は Fourier 積分定理を使って既出の状態になってます.

もうちょっと捕捉しとくと,積分区間 \lim_{C \to \infty} (-C, C) のように固めてしまえば確かに積分の結果を  0 にできます.しかし,こうして出てきた値は Cauchy の主値と呼ばれ,厳密な積分値とは通常区別されます(ここでも Cauchy の名前が登場しましたね).

余談ですがこの問題は正答率が非常に低かったそうです.問題文に Fourier 積分定理を使えと書いてあり,誘導もバリバリあったにもかかわらず,です.まあこの辺は慣れが必要だと思うので,単純に学生の演習量不足が原因ではないでしょうか*4


あと確率統計の試験に Poisson 分布の平均を求めさす問題は出ませんでした.正規分布の平均・分散も出なかった.ごめんね.

*1:いつものことです.

*2:念のため書いておきますが,最後らへんでは  k - 1 k によって取りかえ Maclaurin 展開を使っています.

*3:問題用紙も解答用紙も試験終了後一定期間で捨ててしまうため.

*4:教科書に類題あったけどやれとは言われなかったのでやってなかった人がたくさんいたらしい.課題として出されたプリントをやれば足れりという態度には賛同しかねますが…….

1 = 2 について

ゼロ除算とか単射性の不当な要求にはもう騙されませんよ~

 

ところで,

 \displaystyle{ \sum_{n = 1}^{\infty} \frac{(-1)^{n-1}}{n} = 1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{3} - \frac{1}{4} + \cdots }

について考えたいと思います.部分和に以下のような式変形を施します.

 \displaystyle{ \begin{eqnarray} \sum_{n = 1}^{2m} \frac{(-1)^{n-1}}{n} &=& \sum_{n = 1}^{2m} \frac{(-1)^{n-1}}{n} + \left( 2\sum_{n = 1}^{m} \frac{1}{2n} - 2\sum_{n = 1}^{m} \frac{1}{2n} \right)  \\ &=& \sum_{n = 1}^{2m} \frac{(-1)^{n-1}}{n} + 2\sum_{n = 1}^{m} \frac{1}{2n} -  \left( 2\sum_{n = 1}^{m} \frac{1}{2n} \right)  \\ &=& \sum_{n = 1}^{2m} \frac{1}{n}  -  \left( \sum_{n = 1}^{m} \frac{1}{n} \right) \\ &=& \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{m + n} \\ &=& \frac{1}{m} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{1 + (n/m)} \end{eqnarray} } 

区分求積法を用いることで
 \displaystyle{ \lim_{m \to \infty} \frac{1}{m} \sum_{n=1}^{m} \frac{1}{1 + (n/m)} = \int_0^1 \frac{1}{1+x} dx = \log 2}
を得ます.

これにより,
 1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{3} - \frac{1}{4} + \cdots  = \log 2
が求まりました.めでたし.



ところで,
 \log 2 = 1 - \frac{1}{2} + \frac{1}{3} - \frac{1}{4} + \frac{1}{5} - \frac{1}{6} + \cdots
において,符号ごとにまとめてみると,
 \log 2 = \left(1 + \frac{1}{3} + \frac{1}{5} + \cdots \right) - \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{4}  + \frac{1}{6} + \cdots \right)
となります.

 \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{4}  + \frac{1}{6} + \cdots \right) を足してからまた引いても値は一緒になるはずですから,
 \begin{eqnarray} \log 2 &=& \left(1 + \frac{1}{3} + \frac{1}{5} + \cdots \right) + \left( \frac{1}{2} + \frac{1}{4}  + \frac{1}{6} + \cdots \right) - 2\left( \frac{1}{2} + \frac{1}{4}  + \frac{1}{6} + \cdots \right) \\ &=& \left(1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \cdots \right) - \left(1 + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \cdots \right) \\ &=& 0 \end{eqnarray}

 \log 2 > 0より両辺を \log 2で割ると, 1 = 0となります.ゆえに 2 = 1

説明

これは 1 = 2の証明に使われるテクニックのうち,もっとも遅くに反駁されたものだと考えられます.Cauchy は1821年にこの問題を解決しました.具体的には,無限級数において足し算の順序変更は必ずしも可能ではありません

各項の絶対値を取って足し合わせたときに発散するような級数は条件収束級数と呼ばれます*1.条件収束する級数について,Riemann series theorem という定理が存在し,足し算の順序を適当にいじることで任意の実数に持っていけることが知られています.
en.wikipedia.org

*1:絶対値の和も収束する場合,絶対収束級数といいます.

2年くらい経ったし,漢検準1級をもう一度解いてみる

はじめに

2年前のいまごろ,漢検準1級に合格しました(参照*1.今年もそろそろ第1回試験の合格発表がある模様です.

人間である以上致し方ないことですが,受験当時覚えていたことは時が経つにつれ段々と忘れていきます.ふと,自分は今どのくらい漢字を覚えてるんだろう,と気になったので,実際に問題を解いてみました.使用したのは 漢検協会が公開している過去問題 です.平成30年度第1回試験,つまり自分が受検した1年あとの問題ですね.著作権的にどこまでセーフなのかわからないので,問題や解答は直接掲載せず,結果だけ書いていきます.

結果

大問順に分けています.

  1. 読み……23 / 30
  2. 表外の読み……7 / 10
  3. 熟語の読み・一字訓読み……9 / 10
  4. 共通の漢字……10 / 10
  5. 書き取り……28 / 40
  6. 誤字訂正……4 / 10
  7. 四字熟語…… 書き 12 / 20,意味と読み 6 / 10
  8. 対義語・類義語……12 / 20
  9. 故事・諺……8 / 20
  10. 文章題……書き 4 / 10,読み……8 / 10

総合:131 / 200

感想

見ての通り,惨憺たる結果です.特に書き取りが悲惨.準1級の合格ボーダーは160点前後なので,よほどのことがない限りアウトでしょう.

枇杷」「夙夜」なんかは頻出ということで受検当時覚えてたはずなんですが,ズタボロでした.解答を見て「あーーーーーーーー見覚えある」ってなりました.

読み取りは学習内容を忘れてても部首や文脈から音を類推することができますが,書き取りはそうもいきません.2年前もそうだったんですが,「結構よく見かける漢字なのに形が思い出せない……><」という状態によく陥りました.普段あまりペンを握らない情報系高専生の悲しいところで,IME に漢字の形状を覚えてもらってる弊害がこういうところで出ます.4. 共通の漢字が例外的に満点なのは出題がやたら簡単だったからです.おそらく去年同じ試験を受けた人も4.についてはだいたい同じ感想でしょう.

とはいえ,全滅というわけでもないのが救いです.一応多少は書ける漢字が残っていましたし,解きながら「これ結構行けるのでは」などと思ってました.まあ,2年間というブランクを考慮したら妥当な点数ではないでしょうか.

取得の後日談

ついでなので,準1級を取ったことによる恩恵について少し語ります.

漢検は2級まで取れば十分.それ以降は日常生活とはほぼ関係ない」とよく言われますが,それは割と本当です.日常で「我が廟堂諸公の心地如何に公明なればとて其の議士を視るや……」みたいなことを言ってる人間がいたらちょっとキモいと思います.

それでも,漢検準1級レベルの漢字が登場するシーンもわずかながらありました.たとえば,ぼくは割と夏目漱石森鴎外を好んで読むんですが,この手の文豪の書く文章には難読語が頻出します.この辺をスラスラ読めるのはちょっとした嬉しさです.あと,いきなり漢字クイズを出題してくる友人にもサラッと応対できます*2

それから,話のタネにもなります*3漢検を取ろうとする物好きの中でも準1級を受検するような人間はかなり少ないですし,あまつさえ高専などという理系の世界に住んでいればそういった人間は基本ほぼ見つかりません.履歴書の添削なんかをしてもらってるとき「えー,漢検準1級持ってるんだ,すごい」とか言われます.へへーん.

あとは全然思い浮かびませんね.繰り返しますが,日常生活にはあんまり役立たない資格です.恩恵のことを考えず,趣味と思って受検するのがいいと思います.

2級も解いてみた

準1級がボロボロすぎて悔しかったので2級も解いてみました.同じく平成30年度第1回バージョンです.

  1. 読み……30 / 30
  2. 部首……7 / 10
  3. 熟語の構成……18 / 20
  4. 四字熟語…… 書き 18 / 20,意味 10 / 10
  5. 対義語・類義語……20 / 20
  6. 同音・同訓異字……20 / 20
  7. 誤字訂正……10 / 10
  8. 漢字と送りがな……10 / 10
  9. 書き取り……46 / 50

総合:189 / 200

まあ2級は日常生活でもよく見る漢字ばかり出題されるので,こんなところでしょう.出題範囲は高校卒業程度ということで,そこまで理不尽な難易度ではないので,皆さんも一度解いてみてください.

*1:このエントリを書いたときはまだ2年生でした.あの頃に戻りたい.

*2:彼らは往々にしてスマホを手に持っており,インターネットの力をフルに活用してしてくるのに,解答者にはスマホの使用を絶対許しません.ずるい.

*3:「話のタネ」にはなりますが,そこから話が広がるかはコミュ力の問題です.

マルクス『数学手稿』を読む

はじめに

カール・マルクスは言わずと知れたドイツの経済学者/哲学者です.マルキシズムという理論体系を築き上げ,歴史に(そして私たちの生きる社会に)莫大な影響を与えました.

そんなマルクスですが,数学がめちゃくちゃ苦手だったと言われます.幸いにも,彼の数学勉強ノートは『数学手稿』として現在に残っています.これは生前に公開されたものではなく,死後になって「あのマルクスの手になるものだから……」という感じで勝手に整理・出版されたものだそうです*1.内容は極限から始まり微分に至り,Maclaurin の定理あたりまであります.

というわけで,21世紀の教育を受けて後知恵的に微分積分を学んでいる身でマルクスにマウントを取っていこうと思います.手稿の全てを読む気力は今のところないので,マルクス数学のエッセンスが凝縮されている最初の数ページに限って紹介していきます.

付け加えておくと,ぼくはマルクスの著書だと『共産党宣言』あたりを数冊読んだ程度の人間で,マルキシズムは完全に門外漢です.歴史的に考えて彼の思想的巨大さには敬意を表しますが,彼の哲学に対してはフラットな立場にあります.この『数学手稿』に対しても,あまりマルキシズムのことを考えず虚心坦懐に臨みたいと思います.

0/0

微分を学ぶ人間にとって,ステージ1-1のクリボーに相当する厄介なやつが極限です.慣れてしまえばどうということないのですが*2マルクスはまず,1次関数 y = axに対する考察から入ります*3

独立変数 x x_1まで増し,従属変数 yがそれに応じて y_1まで増すとしよう. 

(中略)

 x x_1まで増すと,

 y_1 = ax_1 したがって  y_1 - y = a(x_1 - x)

いまかりに微分操作がおこなわれ,つまりわれわれが x_1 xまで減少させるとするならば,

 x_1 = x  x_1 - x = 0

したがって,

 a(x_1 - x) = a \cdot 0 = 0

さらに, y x x_1に変じたためでだけ y_1に変じたのだから, yの方についても同じく

 y_1 = y y_1 - y = 0

だから

 y_1 - y = a(x_1 - x)

 0 = 0に変わることになる.

(太字部引用者)

見ての通り,マルクスは「限りなく 0に近づける」という操作を理解できず,「 0にしてしまう」方針を取っています.曰く,これは「差をとる操作を定立し,ついでこれをふたたび止揚」しているのだそうです*4.結局マルクスは,やたら回りくどい解説のすえ,

 \frac{0}{0} = a

という一大公式にたどり着きます. その後,「 0/0という表現では,この表現が生じてきた起源やその意義は跡かたもなく消え失せているから,われわれはこれを dy/dxで置きかえる」というかなり苦しい論法で

 \frac{dy}{dx} = a

を得ます.

 0/0という表現では,この表現が生じてきた起源やその意義は跡かたもなく消え失せている」というのは合っています.つまり,微分においてはどのように 0/0に持っていかれるかが問題なのであって, 0/0実際に行き着いてしまうのは無意味です.にもかかわらず,行き着いてしまったあとで無理やり dy/dxとするのはあまり筋のいいやり方とは言えないでしょう.

要するにマルクスは「限りなく近づける」という極限の気持ちが理解できてなかったみたいなのですが,彼はその辺の議論を「合理主義でことをわりきる……数学者たちの……気やすめ」「限りなく近づけるだけだ,というような逃げ口上」と一蹴し,以降 0/0を押し通していくことになります.

その後は 0/0を連呼しつつ,2次関数の微分を考え,Newton の流体力学にまで達します.この辺は時間があれば読んでみようと思います.

何をなすべきか

さて,私たちはこの手稿から何を学び取ればよいのでしょうか.手稿の訳者は前書きや注解でかなり頑張ってマルクスを弁護していますが,少なくとも「数学の教科書」的には学ぶことはないと思います.

一つ注目しておきたいのは,マルクス微分の定義を 0/0で済ませているにも関わらず,以降はそれなりに真っ当な計算ができている点です.微分の概念はスッとお腹に入ってくるまではよくわからないものですが*5,形式上の計算自体はさほど難しくありません. x^nが出てきたら条件反射のようにnを引きずり下ろし,肩はn-1とするという操作が手に染み付いている人も多いと思います.

もちろんそれでも当面は問題ないのかもしれません.しかし,微分の概念を真に理解しておくことも重要だと思います.マルクス 0/0を呵呵と笑い飛ばせる人がどのくらいいるでしょうか.

概念の理解は苦しく,形式的な計算は易しいものです.この手稿をよすがにして,今一度自分が本当に「微分」の何たるかを理解しているのか問うてみたいですね.

*1:このスパイシーな内容からして,余計なお世話だったとしか言いようがありませんが……

*2:正確には ε-δ 論法というテクを使って定義する必要があり,どうということあったりします.

*3:引用元は『数学手稿』,K.マルクス,菅原仰訳,大月書店.以下同じ

*4:止揚」は aufheben の訳語で,ヘーゲル哲学の頻出ワードです.マルキシズムの中核をなす弁証法唯物論でも止揚は重要概念となっています.

*5:一般にはどうかわかりませんが,少なくともぼくはそうでした.

2100年春アニメ:ごちうさ-887.67期

背景

ごちうさは2014年と2015年にアニメ化されています.タイトルは,それぞれ

となっています.また,2020年にもアニメ化されることが決まっており,タイトルは2014年・2015年の例から考えて

となることが推察されます(正式には未定です).

ここで,西暦年を独立変数  x として考えると,クエスチョンマークの数(=アニメの期数)は  x の関数  f(x) で表せそうですね.というわけで, f(x) の具体的な形を考えてみようと思います.

補間

Lagrange 補間という多項式補間法があります.これを使えば, f(x)

 f(x) = \frac{(x-2015)(x-2020)}{(2014-2015)(2014-2020)} + \frac{(x-2014)(x-2020)}{(2015-2014)(2015-2020)} \times 2 + \frac{(x-2014)(x-2015)}{(2020-2014)(2020-2015)} \times 3

と書けます.頑張って計算することで,

 f(x) = -\frac{2}{15}x^2 + \frac{2691}{5}x - \frac{1629323}{3}

を得ます.

観察

具体的な  f(x) の表示が求まったので,性質を見ていこうと思います.

とりあえずプロットしてみた結果がこちらです.

f:id:villach:20190427123437p:plain

見ての通り下に凸で,最大値はおよそ 3.4になることが分かります. f(x) = 4は実解を持たないので,ごちうさ4期は放映されない公算が大きいです.また,2021年ごろに2期の再放送が,2022年ごろに1期の再放送がそれぞれ見込まれます.

展望

4期が放送されないというのが本当だとすると精神的にかなりつらいので,なんとかして単調増加性を前提した別の補間を見つけていきたいです.

 

追記(2020/03/19)

ごちうさ3期のタイトルは「ご注文はうさぎですか???」ではありませんでした.前提が崩れたので4期をやる可能性が高まってきています.やったね.