はじめての制御工学:第13講

内容

Nyquist の安定判別法について.

系の開ループ特性を考えたとき,伝達関数が安定となるようパラメータを選べても応答の振動が激しくて困ったことになる場合がある.実用上十分なほど安定することを安定余裕があると呼び,そうでない場合(めっちゃ振動する場合など)は安定余裕がないとか小さいとか呼ぶ.以下,系が安定余裕を持っているかどうか判別する方法について考える.

フィードバック制御系の分母多項式 N_p(s) N_c(s) + D_p(s) D_c(s)で表され,この根は閉ループ極と呼ばれる.ここで, N_p(s), D_p(s)はそれぞれ P(s)の分子及び分母であり, N_c(s), D_c(s)はそれぞれ C(s)の分子及び分母である.以前触れた通り,閉ループ極の実部が全て負であれば系は内部安定となる.

さて,いまフィードバック制御系の4つの伝達関数の分母に出てくる 1 + P(s)C(s) N_p(s), D_p(s), N_c(s), D_c(s)で書いてみると,分母は D_p(s) D_c(s)となる.ここでその根を開ループ極と呼ぶことにする.

このとき,系の設計にあたっては開ループ極のうち不安定なものの個数 Zが知りたいのであって,閉ループ極のうち不安定なものの個数 Pは既知であることが多い.Nyquist の安定判別法は, Pがわかっている状態で Zを与える手法である.

(導出はサボったが)Nyquist の安定判別法は以下の手順からなる.

  1. 開ループ伝達関数のベクトル軌跡 L(i \omega) = P(i \omega) C(i \omega)を描く.
  2. 描いたベクトル軌跡と実軸対称な軌跡を描く.これは \omega: - \infty \to 0として軌跡を描くことにほかならない.こうしてできた軌跡と先のベクトル軌跡を合わせて Nyquist 軌跡と呼ぶ.
  3. Nyquist 軌跡が複素平面上の点 -1を時計回りに回る回数を 1,反時計回りに回る回数を -1としてカウントしていき,その合計を Nとする.
  4.  N = Z - Pである.したがって, Z = N + P 0なら系は内部安定である.

さて,実際には P = 0となるようコントローラを設計することが多い(安定な制御対象に安定なコントローラを付ける場合).このとき,簡略化された Nyquist の安定判別法を利用できる.具体的には,Nyquist 軌跡が点 -1を常に左手に見つつ原点へ収束するなら系は内部安定であり,そうでなければ系は不安定となる.

最後に,安定余裕の測定について考える.ここでは簡略化された Nyquist の安定判別法について限定する.Nyquist 軌跡が点 -1を十分な距離を保ちつつ左手に見ていれば系は余裕を持って安定となる.したがって,ベクトル軌跡と点 -1との距離を反映する指標が安定余裕の判定に役立つことがわかる.

ここで,ゲイン交差周波数 \omega_{gc}と位相交差周波数 \omega_{pc}なる値を導入する.それぞれ, |L(i \omega_{gc}) = 1|, L(i \omega_{pc}) = - \pi)を満たすような角周波数である.このとき,位相余裕 PM = \angle L(i \omega_{gc}) + \piが大きいほど系は安定余裕を大きく持ち,ゲイン余裕 GM = \frac{1}{|L(i \omega_{pc})|}が大きいほど,系は L(s)の増大による安定性の喪失を来しづらくなる.ゲイン交差周波数と位相交差周波数はボード線図をじっと睨むことで得られる.

感想

大変遅くなりました.そして長くなりました.

最後の方になるとダラダラしてしまってダメですね.

ところで,制御工学をサボってるうちに試験週間に突入してしまいました.もっとも試験勉強もサボってるんですが.本格的に試験が始まる前に制御工学を終わらせてしまいたいですね.あと1講!