はじめての制御工学:第5講

内容

系の応答特性について.

系にある種の信号(ステップ信号やインパルス信号)を与えたときの応答が,十分な時間を経た後に一定値に収束するかどうか,収束するとしたらどのような値になるか,といった特性を定常特性と呼ぶ.また,初期値から収束に至るまでの応答の変化を過渡特性と呼ぶ.

特性に関する代表的な指標は以下の通り:

  • 定常値:ステップ入力に対する応答y(t)について,t → ∞としたときの極限値
  • 立ち上がり時間:y(t)が定常値の10\%から90\%に達するまでの時間.立ち上がり時間が短いほど系は早く収束する.したがって,立ち上がり時間は系の速応性を評価するための指標である.
  • 遅れ時間:y(t)が初期値から定常値の50%に達するまでの時間.立ち上がり時間と同様な目的の指標.
  • オーバーシュート:y(t)の最大値と定常値との差を,定常値との割合で示したもの.オーバーシュートが大きいと,それだけ系の収束は遅くなる.したがって,オーバーシュートは系の減衰性を示す.
  • 行き過ぎ時間:y(t)が最大値に達したときの t.
  • 整定時間:y(t)が定常値の \pm 5 \%以内に収まるようになるまでの時間.

例として,1次遅れ系の特性について考える.伝達関数は一般に
 G(s) = \frac{K}{Ts + 1}
で表されるが,このときステップ応答は
 y(t) = K(1 - e^{-\frac{t}{T}})
となる.したがって, Tが大きくなるほど速応性は低下する.特に,こうした Tには時定数なる名前がついており,単位ステップ応答が定常値の 63.2 \%に達するまでの時間を表している( t = Tとして計算すればわかる).

また,伝達関数の分母 Ts + 1の根である s = -\frac{1}{T}は,ステップ応答のべき部分に現れていたりする.したがって,伝達関数の極が応答特性に影響を及ぼしていることがわかる.これについては第7講以降で詳しく扱う.

感想

2年次の実験で時定数が出てきた記憶があるんですが,ここでようやく時定数の正体に迫ることができてやや感動的でした.