はじめての制御工学:第14講

内容

ループ整形法について.

フィードバック制御系の開ループ伝達関数 L(s)が持つ周波数特性を好ましいものにするため,ループ整形法なる手法を用いることがある.以下に詳説する.

具体的に必要な特性は,たとえば以下のようになる.

  • 定常特性:低周波数帯域でのゲインが小さくなる.
  • 即応性:ゲイン交差周波数が十分高くなる.
  • 減衰性:位相余裕 PMが十分大きくなる.
  • ロール・オフ特性:高周波数帯域でのゲイン変化が急になる.

これらを満たすために,位相遅れコントローラと位相進みコントローラの2つを利用する.伝達関数はそれぞれ C(s) = \frac{s + \omega_1}{s + \omega_2}, \omega_1 \lt \omega_2 C(s) = \frac{\omega_3}{\omega_4} \frac{s + \omega_4}{s + \omega_3}, \omega_3 \lt \omega_4である.一般には,これらを複数つなぎ合わせてコントローラを構成する.

ロール・オフ特性について.通常,フィードバック制御系には観測ノイズ n(t)が制御対象からの出力に混入する.観測ノイズの影響を少なくするには,観測ノイズが存在する周波数帯域での開ループ伝達関数のゲインを急激に落とす必要がある.

感想

ようやく一通り終わりました.なせばなるものですね.

とはいえ,一周目なこともあり,詳細な計算を追っかけたり,付録に回されている導出過程を読んだりがほとんどできていません.このあたりは二周目以降でフォローしていきたいと思います.

はじめての制御工学:第13講

内容

Nyquist の安定判別法について.

系の開ループ特性を考えたとき,伝達関数が安定となるようパラメータを選べても応答の振動が激しくて困ったことになる場合がある.実用上十分なほど安定することを安定余裕があると呼び,そうでない場合(めっちゃ振動する場合など)は安定余裕がないとか小さいとか呼ぶ.以下,系が安定余裕を持っているかどうか判別する方法について考える.

フィードバック制御系の分母多項式 N_p(s) N_c(s) + D_p(s) D_c(s)で表され,この根は閉ループ極と呼ばれる.ここで, N_p(s), D_p(s)はそれぞれ P(s)の分子及び分母であり, N_c(s), D_c(s)はそれぞれ C(s)の分子及び分母である.以前触れた通り,閉ループ極の実部が全て負であれば系は内部安定となる.

さて,いまフィードバック制御系の4つの伝達関数の分母に出てくる 1 + P(s)C(s) N_p(s), D_p(s), N_c(s), D_c(s)で書いてみると,分母は D_p(s) D_c(s)となる.ここでその根を開ループ極と呼ぶことにする.

このとき,系の設計にあたっては開ループ極のうち不安定なものの個数 Zが知りたいのであって,閉ループ極のうち不安定なものの個数 Pは既知であることが多い.Nyquist の安定判別法は, Pがわかっている状態で Zを与える手法である.

(導出はサボったが)Nyquist の安定判別法は以下の手順からなる.

  1. 開ループ伝達関数のベクトル軌跡 L(i \omega) = P(i \omega) C(i \omega)を描く.
  2. 描いたベクトル軌跡と実軸対称な軌跡を描く.これは \omega: - \infty \to 0として軌跡を描くことにほかならない.こうしてできた軌跡と先のベクトル軌跡を合わせて Nyquist 軌跡と呼ぶ.
  3. Nyquist 軌跡が複素平面上の点 -1を時計回りに回る回数を 1,反時計回りに回る回数を -1としてカウントしていき,その合計を Nとする.
  4.  N = Z - Pである.したがって, Z = N + P 0なら系は内部安定である.

さて,実際には P = 0となるようコントローラを設計することが多い(安定な制御対象に安定なコントローラを付ける場合).このとき,簡略化された Nyquist の安定判別法を利用できる.具体的には,Nyquist 軌跡が点 -1を常に左手に見つつ原点へ収束するなら系は内部安定であり,そうでなければ系は不安定となる.

最後に,安定余裕の測定について考える.ここでは簡略化された Nyquist の安定判別法について限定する.Nyquist 軌跡が点 -1を十分な距離を保ちつつ左手に見ていれば系は余裕を持って安定となる.したがって,ベクトル軌跡と点 -1との距離を反映する指標が安定余裕の判定に役立つことがわかる.

ここで,ゲイン交差周波数 \omega_{gc}と位相交差周波数 \omega_{pc}なる値を導入する.それぞれ, |L(i \omega_{gc}) = 1|, L(i \omega_{pc}) = - \pi)を満たすような角周波数である.このとき,位相余裕 PM = \angle L(i \omega_{gc}) + \piが大きいほど系は安定余裕を大きく持ち,ゲイン余裕 GM = \frac{1}{|L(i \omega_{pc})|}が大きいほど,系は L(s)の増大による安定性の喪失を来しづらくなる.ゲイン交差周波数と位相交差周波数はボード線図をじっと睨むことで得られる.

感想

大変遅くなりました.そして長くなりました.

最後の方になるとダラダラしてしまってダメですね.

ところで,制御工学をサボってるうちに試験週間に突入してしまいました.もっとも試験勉強もサボってるんですが.本格的に試験が始まる前に制御工学を終わらせてしまいたいですね.あと1講!

はじめての制御工学:第12講

内容

ボード線図と周波数伝達関数について.

高次の伝達関数について,部分分数分解をほどこして個別に周波数特性を求めてから合成してもともとの周波数特性を求められる.

2次遅れ系ではゲイン K = 1でもゲイン線図が 0デシベルを超えることがある.これを共振と呼ぶ.

ゲインが -3デシベルに達する周波数をバンド幅と呼び,系の入力追従特性の指標となる.

ステップ応答について考える.ステップ応答は(Fourier 変換を見ることで明らかに)無限の周波数成分を含んでいる.高周波数帯域についてはゲインが負となるため,ステップ応答はすぐさま1に収束することなく(ステップ信号と同一でなく),適当な時間を経たのちに収束する.

系の伝達関数 G(s)がわかっている場合, G(i \omega)なる関数を周波数伝達関数と呼ぶ.周波数伝達関数の大きさはゲインと関係し,偏角は位相差を表す.したがって,周波数伝達関数を見ることで系の周波数特性を分析できる.

周波数伝達関数 \omegaを変数とする複素平面上のベクトルと見なせるから, \omega 0から \inftyまで変化させたときにベクトルがどう動くかを考えると周波数特性の分析に役立つ.ベクトルの軌跡を(そのまんま)ベクトル軌跡と呼ぶ.ベクトル軌跡もボード線図と同じく周波数特性を表す図だが,一つの図に大きさと偏角を同時に描きこめるのが利点である.

感想

大遅刻ですね.ごめんなさい.2日も空いてしまいました.

追記

 G(s) s = i \omegaを代入しているのは,要するに Laplace 変換のかわりに Fourier 変換をしているのに等しいです.通常 Fourier 変換は積分範囲を \mathbb{R}全体で取りますが,入力信号が t \lt 0 0となることから正実数全体での積分である Laplace 変換に機械的に代入することが正当化されます.

はじめての制御工学:第11講

内容

周波数特性について.

 A\sin(\omega t + \theta)なる正弦波を入力した際の応答を周波数応答と呼ぶ.

周波数応答の特性(振幅,位相など)はボード線図を書くことで把握できる.また,応答の振幅が Bとなるとき, 20 (\log A - \log B)をゲイン(利得)と呼び,デシベルの単位で取り扱う.

感想

残すところあと3講のみですね.

はじめての制御工学:第10講

内容

フィードバック制御系の定常特性について.

第9講では,フィードバック系の過渡特性を望ましいものにするためのコントローラ調整について考えた.今回は定常特性について扱う.

重要な制御仕様としては,

  • ある目標値 r(t)に対して,偏差 e(t)の定常値を可能な限り小さくする.
  • 外乱 d(t)の混入がある状況下で,偏差 e(t)の定常値を可能な限り小さくする.

などが挙げられる.偏差の定常値をそのまんま定常偏差と呼ぶ.

フィードバック系における偏差(の Laplace 変換)は,以下のような式で与えられる.

 E(s) = \frac{1}{1 + P(s)C(s)}R(s) - \frac{P(s)}{1 + P(s)C(s)}D(s)

第一項が目標値に対する伝達関数,第二項が外乱に対する伝達関数となっている.

 r(t)としてステップ関数を考えると, P(s)または C(s)が[s = 0]に極を持っていれば前者の制御仕様を達成できる.また, d(t)としてステップ関数を考えると,系の内部安定性を確保しつつ C(s)が[s = 0]に極を持つようにすれば,後者の制御仕様を達成できる.

一般の目標値および外乱に対してはもう少し弱いことしか言えない.定常偏差が0となるためには, C(s) \mathcal{L}[r(t)], \mathcal{L}[d(t)] と同一の因子を持っていればよい.これは内部モデル原理と呼ばれる.

感想

計算が多くて大変でした.

ところで,この節は毎回小学生並の短文を垂れ流す用途にしか使われていないので,撤廃してもよさそうな気がしてきました.

はじめての制御工学:第9講

内容

PID 制御について(ようやく制御工学っぽいワードが出てきましたね).

第8講であつかった比例制御は Propotion の頭文字を取って P 制御と呼ばれる.単純な制御構成だが有用である.設計パラメータとしては比例ゲイン K_pのみを要する.また,偏差としては現時点でのもののみを受け付ける.過去の偏差がどうであったかは影響しない.

一方,過去の偏差をも含めて制御するのが PI 制御である.PI 制御は,P 制御に I 制御(積分制御)を加えたものである.I 制御は偏差の過去値情報を含んでいる積分 \int_0^t e(\tau) d \tau を要求する.したがって,積分ゲインを K_iとすると,偏差と操作量との間に成り立つ関係(コントローラのはたらき)は以下のようになる(Laplace 変換の積分則を思い出す):

 U(s) = C(s)E(s) = (K_p + \frac{K_i}{s})E(s) = \frac{sK_p + K_i}{s}E(s)

最期に,将来の偏差も考慮に入れる PID 制御について考える.PID 制御は,PI 制御に D 制御(微分制御)を加えたものである.微分ゲインを K_dとすると,コントローラの入出力関係は以下のようになる:

 U(s) = C(s)E(s) = (K_p + \frac{K_i}{s} + sK_d)E(s) = \frac{s^2K_d + sK_p + K_i}{s}E(s)

こうして,PID 制御系の設計に際して扱うべきパラメータは K_p, K_i, K_dの3つであるとわかった.これらのパラメータは系の過渡応答と密接な関係を持っている.パラメータの変化にしたがって系の極がどのように動くかは,根軌跡と呼ばれる図を書いて考える.

感想

遅刻ですね.ごめんなさい.

はじめての制御工学:第8講

内容

制御系の設計について.

コントローラを突っ込むことで制御を行う.特に重要なのは制御系全体を安定に保つことである.

コントローラとして  K_p をとると比例制御と呼ばれる構成になる.フィードフォワード制御系の場合,制御対象が安定ならパラメータを適切にとることで内部安定性を得られる.一方,外乱の影響を比例制御で抑え込むことは不可能である.

フィードバック制御系の場合は,制御対象が不安定でもコントローラのパラメータを適当に選べば内部安定性を得られる.また,外乱の影響を解消できる.

感想

急にボリュームが増えたような気がします.この章をきちんと消化しておきたいので,明日も第8講の学習に充て,第9講を1回パスする予定です.理解が深まって新たな理解を得られれば記事を更新する可能性があります.