一ヶ月前のことですが,漢検準1級に合格しました.
勉強を始めるにあたり,いろいろなWebサイトを参考にさせていただきました.これから受験する人のために,私も勉強法とか感想とかについて残しておこうと思います.
(追記)この記事を読んだ後輩から「結局地頭で殴ってるだけじゃないですか?」と言われました.私の地頭のよしあしはともかく,実際この記事に挙げた勉強法はかなり雑なものになっています.若いから単純な暗記がうまくいっている面もあるはずです.もとよりこんなブログの記述を真に受ける人も少ないでしょうが,あくまで参考程度にとどめていただければと思います.
漢検準1級について
漢検は(公財)日本漢字能力検定協会が実施している検定です.6月,10月,2月と,年に3回行われます.
準1級は満点が200点,合格点が160点程度で,約3000字の漢字が出題範囲となります.
合格点(ボーダー)についてですが,自分の経験から言えば,調整でボーダーが下がることはあれども上がることはないと思います.つまり,155点とかにはなっても175点にはならないということです.とはいえ,漢検協会側の公式規定ではないので,断言することはできません.
出題分野
全部で12問あります.読み系統の問題は青字で,書き取り系統の問題は赤字で記してあります.
読み,表外の読み,熟語と一字訓読,共通の漢字,書き取り,誤字訂正,四字熟語の書き取り,四字熟語の意味と読み,対義語と類義語,故事成語・ことわざの書き取り,文章題の書き取り,文章題の読み
見ての通り,単純な読み・書き取り以外の出題がたくさんあります.特に準1級では,漢字力だけでなく,ある程度の語彙力が要求されます.
勉強法
私の場合,3月末頃に勉強を始めたので,およそ3ヵ月勉強したことになります.総勉強時間は50時間くらいでした(あまり詳らかには記録してないので適当ですが).
4月いっぱいまで,ナツメ社のカバー率測定問題集をやっていました.一冊を完璧にこなすつもりで1ページずつ覚えました.この問題集はどちらかというと最小の努力で最低限の点数(160点)を狙うタイプなので,問題集をこれ一冊に絞る場合は完璧に暗記した方がよいと思います.
書き系統問題は漢字練習帳にひたすら書き取って覚えました.中学校で使うような200字詰めの漢字ノートを1.5冊ぐらい使いました.手が痛くなりますが,結局のところこれが最善の勉強法ではないかと感じています.
小学校の国語の宿題みたいですね……
読み系統問題は赤シートを使いながらブツブツ唱えて覚えました.1ページを3回くらい繰り返してやると結構覚えられるものです.
カバー率測定問題集を一周した途端,モチベが激減しました.短期的目標を達成したので,これから何をやればいいのかわからなくなってしまったんだと思います.とりあえず成美堂の本試験型問題集を購入し,ポツポツ解いていました.この問題集はやや難易度が高めで,カバー率に出ていないような問題もたくさん出題されます.全部覚える必要はないですが,保険と思っていくつかの新しい漢字を覚えました.
並行してカバー率の二周目をはじめました.どれだけ必死に暗記しても,数週間経つと次第に記憶が薄れていきます.一周目の段階で既に記憶が曖昧だったものをメインに,ひたすら記憶の再定着を図りました.勉強法は一周目と同じで,漢字練習帳と赤シートを使ったゴリ押しです.
5月の半ばに差し掛かるとモチベが完全に消滅しました.カバー率の二周目は途中で放り出してしまいました.これ以上新しく漢字を覚えるのが嫌になったので,過去問を解いて安心感を得ることに努めました.幸いにも学校の図書館に協会の出版している過去問が置いてあったので,借りて解いてみました(ちなみに,過去問はコンビニのプリンターを使って入手することもできるそうです).ほとんどの回で安定して160点以上を取れるようになっていました.
それからは安心しきって数学の勉強なんかをしていました.今になってみるとなかなか危なかったと思います.漢字の記憶なんて一ヶ月もするとどっかに飛んでいってしまうので,これから受験する人は,一通り覚えたとしても時間をおいてしつこく覚え直すことをおすすめします.
試験前日に遅まきながら危機感を抱いて,ちょっとだけカバー率を復習しました.
試験当日
試験会場まで行くのがしんどかったです.都市から離れすぎているのは田舎の悪い点の一つです.
準1級は試験時間が最後の15:30~16:30です.2時間以上前に会場についたのでかなり暇でした.試験会場への入場は試験開始30分前まで不可能です.どうしようもないので近くの紀伊国屋で暇を潰していました.都会の書店ってすごいんですね.田舎の書店は資金繰りの厳しさから拝金主義に身を売るかさもなくば潰れるかを強いられています.
15時ごろ試験会場に入りました.準1級は試験時間が4級・6級と被っているので,会場に小学生たちがたくさんいました.私が行った試験会場は結構不便なところでした.会場によってはトイレがなかったり狭かったり汚かったりする場合もあります.あらかじめ用を足しておきましょう.
準1級の受験者はほとんどが年配の方で,20代以下の受験者は私ふくめて3人くらいしかいなかったと記憶しています.
試験の内容ですが,読み問題で見たことのない熟語ばかり出題されたので面食らいました.仕方がないので推測で答えました.漢字一文字ずつの読みを覚えておくとこういうときに役立ちます.おかげで読み問題は全問正解でした.
書き問題は思った以上にスラスラ解けました.四字熟語,類義語・対義語,故事成語・ことわざなどの懸念していた分野も上首尾でした.共通の漢字を除いて,ほとんど全ての分野で満足行く結果を残せたと思います.各分野の詳細については後述します.
見直しなども含めて,結局1時間をフルで使い切りました.周りからは開始後20分ぐらいでペンの音が聞こえなくなったので若干不安になりました.というのも,私はキレイな字を書くことを全く意識せずに勉強していたので,本試験向けのキレイな字を書くのに手間取ったのです.試験前に一度は自分で模試をやって,キレイな字で時間内に解答を完成させられるか確認しておいたほうがいいと思います.ちなみに字が汚すぎると不正解扱いになるそうです.
それぞれの分野について
読み
オーソドックスな読み問題が出題されます.音読みが20問,訓読みが10問の計30問で,各1点です.
音読みで出てくる熟語は聞いたことのないものばかりです.かなり豊かな言語生活を送っている人でないと初見で正答するのは難しいと思います.問題集で見た熟語を片っ端から暗記するのも手ですが,本試験で見たことのない言葉が熟語されると解けなくなるので,熟語単位ではなく漢字単位で覚えましょう.ついでに漢字の意味もそれとなく覚えておくと,他の分野の問題を解くのにも役立ちます.
訓読みはひねくれてるとしか思えないような問題が出ます.とくに送り仮名のない訓読みが面倒です(灸→やいと,厨→くりや,廓→くるわ,など).ひたすら暗記するしかありません.
表外の読み
「表」とは常用漢字表のことです.したがって,常用漢字表に記されていない読みを答えることになります.主に訓読みですが,5%ぐらい(体感)の確率で音読みも出ます.10問出題,各1点です.
ひねくれた読みが出ます.観念してください.これもひたすら暗記です.ただ,範囲があまり広くないですし,送り仮名とか漢字とかからなんとなく読みを想像できるので,そこまで難しくはありません.何より読めたら気持ちいいです.「熟れた」を「こなれた」ってスラスラ読めるとめちゃくちゃかっこよくないですか?
熟語と一字訓読
熟語の読みと一字訓読(漢字一文字+送り仮名,の訓読み)をセットで答える問題が出題されます.問題数は5セット(10問),1問1点です.熟語の読みは大して難しくないですし,一字訓読の方も熟語に使われている漢字からなんとなく推測できます.
共通の漢字
文が二つ示されます.各文はそれぞれ一文字が空白になっており,共通して空白部分に当てはまる漢字を答えます.例えば,
「ヤード・ポンド法は( )進的に廃止されるべきである./( )化式は数列の各項の値を表す数式である.」 答:漸
といった具合です.詳しくは漢検協会の公開している過去問を見てみてください.全5問の各2点です.
私が一番苦労したところです.本試験では5問中2問しか取れませんでした.うまい例が思いつかなかったので適当な例文を挙げましたが,本当の試験ではもっと堅苦しくて意味不明な文が出題されます.相当な語彙力が必要となる問題です.
対策方法としては,普段から夏目漱石を読んでおく,神に祈る,の二つが挙げられます.
解答の候補が読みで示されるため,勘で解くのも可能といえば可能です.ただし,5問に対して8つの候補が存在します(あまりが発生するということです).
書き取り
オーソドックスな書き取りです.音読み訓読みがないまぜで出題されます.全20問,各2点.
読み問題とは違って,聞いたことのある言葉,見たことのある漢字がたくさん出ます.書き取り系統の問題は全て1問2点なので,落とさないようにしたいところです.
何度も言いますが,ひたすら書き取って覚えましょう.漢字には部首という便利なシステムがあるため,パーツごとに形を覚えてしまえば字形を覚える努力を省くことができます.
見たことがある漢字ばっかり出題されるからといって勉強をサボると大変なことになります.というのも,パソコンやスマホの変換機能に常日頃頼りすぎているせいで,「ぼんやりと形が浮かぶんだけど,書けって言われると書けない」漢字が大量にあるからです.現代人の私たちは考えている以上にコンピュータに支配されています.慢心しないで最低でも一度は書いてみたほうがいいです.
誤字訂正
文中の誤字(読みが同じ別の漢字が誤って使われているもの)を修正する問題です.5問出題され,各2点(完答)です.
注意して文を読めば簡単に誤りを見つけることができます.あとは語彙力勝負です.夏目漱石を読んでおきましょう.
四字熟語
書き取りが全10問,読み取り+意味判別が全5問で各2点です.
暗記してください.四字熟語は書き取りと読み取り+意味判別の2問出題されますが,四字熟語そのものを覚えておかないとどちらも解けません.意味は使われている漢字からなんとなく推測できます.
そこまで大量の四字熟語が出るわけでもないので,暗記は案外簡単です.聞いたことのある四字熟語はあまり多くないですが.
対義語・類義語
全10問(対義語5問,類義語2問),各2点です.
語彙力が問われる問題です.とはいえ,解答の候補が示されているため,消去法で解くことも可能です.主な対策は夏目漱石を読んでおくことです.
全10問,各2点です.
動物や植物の漢字表記を覚えておくことがポイントです.故事成語にはたくさん動植物が出てくるからです.私が受けたときは8割ぐらい動植物の名前の漢字表記を問う問題だった気がします.あとはまあ暗記です.要するに全部暗記です.
文章題
主に明治の文豪たちの文章が出題されます.中学校の国語のテストみたいに,文章中の一部が空白になったり線を引かれたりしていて,その部分を書いたり読んだりする問題です.書き取りは全5問の各2点,読み取りは全10問の各1点です.
夏目漱石が真価を発揮する分野です.先述した書き取り問題と読み問題のところで勉強した言葉が大量に出るので,特別な勉強はあまり要りません.文語体の文章に慣れておくことが肝心です.そのためには夏目漱石を読んでおくべきです.過去もっとも出題されたのは夏目漱石と幸田露伴らしいので,幸田露伴を読むのもいいかもしれません.
問題文は試験を30分くらいで解き終えてしまった場合の暇つぶしにも使えます.
おわりに
とても長い文章になってしまいました.申し訳ないです.
暗記しか言ってない気もしますが,実際のところ,スマートな勉強方法はないと感じています.ゴリゴリ頑張るのが一番です.
執拗に夏目漱石を推しましたが,別に夏目漱石にこだわって読む必要はないと思います.実のところ,私は漢検対策で一冊も夏目漱石を読んでいません.森鴎外は一冊読みましたが.夏目漱石でなくてもいいので,とにかく語彙力をつけておきましょう.
漢検準1級に合格すると,漢検生涯学習ネットワークというのに入会できるそうです.年に数回漢字についての雑誌が送られてきたりするそうです.入会費・年会費は無料です.お得ですね.
漢検準1級は精出して暗記すればかならず合格できる試験です.受験される方はぜひ頑張ってください.応援しています.